BtoBのオウンドメディア|問い合わせにつながる記事の型と導線【中小企業向け】
この記事でわかること
- BtoBのオウンドメディアがBtoCと違う点と、中小企業が取り組みやすい理由
- BtoBで読まれる記事の型と、検討の段階ごとの並べ方
- 資料ダウンロード・相談・事例・比較記事を使った、問い合わせへの導線
- 事例記事の取材項目と、比較記事を公平に作る方法
- 東海バネ工業・カオナビ・サイボウズのメディアの形
- 中小企業の6か月の進め方と、記事経由の商談の数え方
目次
- BtoBのオウンドメディアの特徴
- 中小企業が取り組みやすい理由
- BtoBでの目的・ゴールの置き方
- BtoBで狙う言葉の特徴
- 向いている会社・向いていない会社
- BtoBで読まれる記事の型
- 1つのテーマを型で広げる
- 検討の段階ごとに記事を並べる
- 社内で説明するときに使える記事にする
- 型ごとの書き方のこつ
- 用語の解説を書くときの工夫
- 問い合わせにつなぐ導線
- 記事ごとに案内を出し分ける
- 資料ダウンロードの作り方
- 記事の最後の案内文の例
- フォームの項目は少なくする
- 記事から問い合わせまでの流れの例
- 資料を取った人へのフォロー
- サービス・事例のページを整える
- 問い合わせへの返事の早さを決めておく
- 計測の設定
- 事例記事・比較記事の作り方
- 事例記事の取材項目
- 事例記事の見出しの組み立て
- 社名を出せないときの書き方
- 比較記事を公平に作る
- 実在する会社のメディアの形
- 東海バネ工業:技術の情報・現場の読み物
- カオナビ:用語集・資料ダウンロード
- サイボウズ:製品の外側のテーマで読者を集める
- 自社に当てはめるときの考え方
- 3社から学べること
- 中小企業の進め方
- 最初の10本の例
- 記事を営業に生かす
- 社長や技術者の名前で書く
- いまのお客様にも記事を届ける
- 展示会や紙の営業と組み合わせる
- 少人数で回すときのAIの使い方
- 成果の測り方
- 記事経由の商談を追いかける
- 経営者への報告の形
- BtoBでつまずきやすい点
- 検討期間の長さを考えて判断する
- よくある質問
- まとめ
「会社向けの商売なので、検索から問い合わせが来るとは思えない」「オウンドメディアを始めたが、読まれても商談にならない」。
BtoB(会社を相手にする商売)のオウンドメディアでは、こうした声をよく聞きます。
BtoBでは、ひとつの言葉が検索される回数は少なくても、1件の問い合わせが大きな取引につながります。
大事なのは記事の数より、検討の段階に合った記事を用意し、記事を読んだ人を資料や相談へ自然に案内する道筋を作ることです。
この記事では、BtoBのオウンドメディアの特徴、読まれる記事の型、問い合わせにつなぐ導線、事例記事と比較記事の作り方、実在する会社のメディアの形、中小企業の進め方と成果の測り方までを解説します。
立ち上げの手順や毎月の運用の進め方は、それぞれ別の記事で詳しく扱っています。
BtoBのオウンドメディアの特徴

BtoBのオウンドメディアは、会社向けに商品やサービスを売る会社が、取引先になりうる会社の担当者に向けて記事を出すものです。
BtoC(一般の消費者向け)と比べると、読む人も、買うまでの流れも大きく違います。
| BtoB | BtoC | |
|---|---|---|
| 決める人 | 担当者が調べ、上司や経営者が決める。複数の人が関わる | 多くは本人が決める |
| 買うまでの期間 | 数週間から数か月、長いと1年以上 | その場から数日が多い |
| 検索される回数 | 言葉ごとの回数は少ない | 多い言葉が多い |
| 1件の問い合わせの価値 | 大きい。継続の取引になることも多い | 1回の購入額は小さいことが多い |
| 読む人が求めるもの | 社内で説明できる材料(費用の内訳、比較、事例、進め方) | 自分に合うかどうか、気軽さ |
| 記事の後の行き先 | 資料、相談、見積り、事例 | 購入、会員登録 |
この表のうち、BtoBで特に効いてくるのが「決める人が複数いる」ことです。
記事を読む担当者は、自分が決めるためだけでなく、上司に説明するための材料を探しています。
社内で回せる表や、比較の観点、費用の内訳が載っている記事は、担当者の資料にそのまま使われ、上司の目にも触れます。
中小企業が取り組みやすい理由
オウンドメディアは大企業のものと思われがちですが、BtoBでは中小企業のほうが有利な点もあります。
- 専門が狭く深い:特定の加工、特定の業界向けのシステムなど、得意分野がはっきりしている会社は、その分野の細かい質問に答える記事を、大企業より具体的に書ける
- 競う相手が少ない:専門的な言葉ほど、検索の上位を大手のメディアや比較サイトが押さえていないことが多い
- 現場の情報を出しやすい:社長や技術者が自分で話せるので、現場の手順や失敗の例など、ほかで読めない情報を記事にしやすい
- 1件の価値が大きい:月に数件の問い合わせでも、事業にとって意味のある数字になる
BtoBでの目的・ゴールの置き方
BtoBのオウンドメディアの目的は、「問い合わせを増やす」だけでは足りません。
検討が長いBtoBでは、問い合わせの手前で検討している会社の名前と連絡先を知ること(資料のダウンロードなど)にも大きな意味があるからです。
目的は、たとえば次のような1文にしておきます。
試作の外注先を探している装置メーカーの設計・購買の担当者が、費用や頼み方を調べたときに当社の記事が出て、資料をダウンロードしてもらう。1年後に、資料をダウンロードした会社を月10社、そこからの商談を月2件にする。
ゴールの数字を「資料を取った会社の数」と「そこからの商談の数」の2段にしておくと、商談が少ない月でも、資料の数でメディアが働いているかを判断できます。
数字の置き方の考え方は、立ち上げの記事で詳しく解説しています。
BtoBで狙う言葉の特徴
BtoBでは、同じものを探していても、調べる人の立場によって検索する言葉が変わります。
設計や技術の担当者は専門の言葉で検索し、購買や総務の担当者は一般的な言葉で検索します。
狙う言葉を調べるときは、誰が調べるのかを分けて考えると、取りこぼしが減ります。
| 調べる人 | 検索の言葉の傾向 | 金属部品の試作加工の例 |
|---|---|---|
| 設計・技術の担当者 | 専門用語、材質や加工法の名前、数字の条件 | A5052 切削 公差/薄肉 加工 歪み 対策 |
| 購買・調達の担当者 | 依頼、外注、業者、費用、納期 | 試作 加工 外注/小ロット 加工 業者 探し方 |
| 経営者・事業の責任者 | コスト、内製と外注、比較 | 試作 内製 外注 比較/試作 コスト 削減 |
| はじめて頼む人 | やり方、流れ、何を用意するか | 図面 なし 試作 依頼/試作 依頼 流れ |
BtoBで問い合わせに近いのは、「外注」「依頼」「業者」「費用」「納期」がつく言葉です。
検索される回数は少なくても、頼む先を探している人の言葉なので、最初の記事の候補に入れます。
技術の担当者の言葉は、技術資料や計算の記事で受け止め、その記事から設計の相談へ案内します。
向いている会社・向いていない会社
ただし、どの会社にも向いているわけではありません。
次の表で、自社がどちらに近いかを確かめてみてください。
| 向いている会社 | 向いていない会社 |
|---|---|
| お客様が、頼む先を探すときに検索している(「〇〇 加工 依頼」「〇〇 システム 比較」など) | 取引先が決まった数社に限られ、新しい取引先を探す必要がない |
| お客様から同じような質問を何度も受けている | 商品の説明が、ほとんど紹介や代理店経由で済んでいる |
| 費用や進め方を、ある程度は公開できる | 取引の条件を外に一切出せない |
| 技術や現場に詳しい社員が、月に少しは原稿の確認に時間を取れる | 原稿を確認できる人がまったくいない |
BtoBで読まれる記事の型

BtoBのオウンドメディアで問い合わせにつながる記事には、決まった型があります。
型ごとに、検索される言葉と、読む人の検討の段階、記事の後に案内する先が違います。
金属部品の試作・小ロットの加工を請け負う会社を例に、型を並べます。
| 記事の型 | 検索の言葉の例 | 読む人の段階 | 記事の後に案内する先 |
|---|---|---|---|
| 用語・基本の解説 | 〇〇加工 とは/公差 とは | 情報を集め始めた | 関連する詳しい記事、用語の一覧 |
| 悩み・課題の解決 | 試作 コスト 下げる/加工 精度 出ない 原因 | 困りごとがはっきりした | チェックリストの資料、相談 |
| 費用・相場 | 試作 加工 費用/小ロット 加工 単価 | 予算を考え始めた | 見積りの依頼、費用の早見表の資料 |
| 比較・選び方 | 加工会社 選び方/切削 3Dプリンター 比較 | 頼む先や方法を比べている | 選び方のチェックリストの資料、事例 |
| 進め方・流れ | 試作 依頼 流れ/図面 なし 加工 依頼 | 頼むことを決めかけている | 相談、見積りの依頼 |
| 事例 | 〇〇業界 試作 事例 | 自社に近い例を探している | 相談、ほかの事例 |
| 技術資料・計算 | 〇〇 計算式/材質 比較 表 | 設計や仕様を詰めている | 設計の相談、技術資料のダウンロード |
| よくある質問 | 〇〇加工 最小ロット/納期 どのくらい | 頼む直前で細かい点を確かめている | 見積りの依頼 |
中小企業が最初に力を入れるべきなのは、費用・比較・進め方・事例の4つの型です。
この4つは、頼む先を探している人の言葉に答える記事なので、検索される回数が少なくても問い合わせにつながりやすくなります。
用語の解説は、ほかの記事から内容を補う役として後から増やしていきます。
1つのテーマを型で広げる
記事の案が出てこないときは、自社の得意なテーマを1つ選び、型の表に沿って広げてみます。
「アルミの試作」というテーマなら、次のように8本の記事の案ができます。
| 記事の型 | 記事の案 |
|---|---|
| 用語・基本の解説 | アルミの種類と、試作でよく使う材質の違い |
| 悩み・課題の解決 | アルミの薄い部品が歪むときの原因と対策 |
| 費用・相場 | アルミの試作の費用はどう決まるか(数量・形状・精度・表面処理) |
| 比較・選び方 | アルミの試作は切削か、3Dプリンターか、板金か |
| 進め方・流れ | アルミの試作を頼むときの流れと、用意するもの |
| 事例 | 装置メーカーのアルミ部品を、図面の相談から2週間で試作した例 |
| 技術資料・計算 | アルミの材質ごとの強さと加工のしやすさの一覧表 |
| よくある質問 | アルミの試作で、1個から頼めるか、納期はどのくらいか |
得意なテーマが3つあれば、これだけで20本以上の記事の案になります。
どの型から書くかは、次の「検討の段階」で決めます。
検討の段階ごとに記事を並べる
BtoBの買い手は、いくつかの段階を経て発注先を決めます。
段階ごとに必要な記事をそろえておくと、どの段階で検索した人も、次の段階の記事へ進めます。
| 段階 | 担当者がしていること | 用意する記事 |
|---|---|---|
| 1. 課題に気づく | 困りごとの原因や、ほかの会社がどうしているかを調べる | 悩み・課題の解決、用語の解説 |
| 2. 方法を調べる | 解決の方法と、それぞれの費用や期間を調べる | 比較・選び方、費用・相場 |
| 3. 社内で説明する | 上司に説明する資料を作る。予算の相談をする | 費用の内訳、比較の表、進め方とスケジュール |
| 4. 頼む先を選ぶ | 候補の会社を2〜3社に絞り、事例や対応範囲を確かめる | 事例、よくある質問、サービスの進め方 |
| 5. 問い合わせる | 見積りや相談を申し込む | 問い合わせのページ、見積りに要る情報の案内 |
記事を並べるときは、段階1から書くのではなく、段階2〜4の記事から先に書きます。
段階1の記事は読まれても問い合わせまでの距離が長く、段階2〜4の記事がないと、読んだ人の行き先がありません。
社内で説明するときに使える記事にする
BtoBの記事で読まれ続けるのは、担当者が上司への説明にそのまま使える記事です。
次の要素を入れておくと、記事が担当者の社内資料に組み込まれ、決める人の目にも届きます。
- 費用の内訳の表:総額だけでなく、何にいくらかかるか、何で変わるか
- 比べる観点の表:価格、納期、対応範囲、品質の確かめ方など、比べる項目をそろえた表
- 進め方とスケジュール:問い合わせから納品まで、誰が何をして、何日かかるか
- リスクと対策:うまくいかないときに何が起きるか、どう防ぐか。決める人がいちばん気にする点
- 自社に近い事例:同じ業界、同じ規模の会社の例
型ごとの書き方のこつ
同じ型でも、書き方次第で問い合わせにつながるかどうかが変わります。
BtoBで特に差が出る点をまとめます。
- 費用の記事:価格をはっきり出せない場合でも、「数量・材質・精度の3つで決まる」のように決まり方を説明し、条件ごとの例を示す。「お問い合わせください」だけで終わらせない
- 比較の記事:自社の方法が向かない場面も書く。向き・不向きがはっきりしているほうが、読む人は自社に合うかを判断でき、合う人からの問い合わせが増える
- 進め方の記事:問い合わせのときに用意しておくもの(図面、数量、希望の納期など)を一覧にする。問い合わせの中身がそろい、見積りまでが早くなる
- 技術の記事:計算式や材質の表など、設計の担当者が手元に置いておきたくなる情報を入れる。保存して何度も見に来る記事になる
用語の解説を書くときの工夫
用語の解説は、BtoBでもよく読まれる型ですが、意味だけを短く書いた記事は、ほかのサイトの記事や、検索結果に出るAIによる概要と差がつきません。
用語の解説を書くときは、自社の仕事の中で、その言葉がどう使われるかを必ず足します。
「公差とは」の記事なら、意味の説明に加えて、試作でよく指定される公差の幅、厳しい公差が費用や納期にどう影響するか、図面で公差を指定するときの注意を書きます。
そこまで書けば、意味を調べに来た人が、そのまま費用や相談の記事へ進む理由ができます。
営業が商談で説明していることを記事にする
どの型の記事を書くか迷ったら、営業担当が商談で毎回説明していることを書き出してみてください。
営業が繰り返し口で説明している内容は、お客様が必ず知りたいことです。
記事にしておけば、検索から読まれるだけでなく、営業が商談の前後に送る資料にもなります。
問い合わせにつなぐ導線

導線とは、記事を読んだ人を、資料や相談、問い合わせへ案内する道筋のことです。
BtoBでは、検討の途中の人がいきなり「問い合わせ」をするのはハードルが高いため、ハードルの違う案内を段階的に用意するのが基本です。
| 案内 | 読む人にとってのハードル | 向いている段階 | 会社が得られるもの |
|---|---|---|---|
| 関連する記事・事例 | とても低い(クリックするだけ) | どの段階でも | サイトの中で読み進めてもらえる |
| 資料のダウンロード | 低い(名前と連絡先を入れる) | 方法を調べる、社内で説明する | 検討している会社の名前と連絡先 |
| セミナー・オンラインの説明会 | 中くらい(日時を空ける) | 方法を調べる、頼む先を選ぶ | 直接話す機会 |
| 無料の相談・診断 | 中くらい | 頼む先を選ぶ | 具体的な課題と、案件の大きさ |
| 見積りの依頼・問い合わせ | 高い | 頼む先を選ぶ、問い合わせる | 商談 |
中小企業がすべてを用意する必要はありません。
まずは資料のダウンロードと、相談・見積りの依頼の2つを用意し、記事の型に合わせて出し分けるところから始めます。
記事ごとに案内を出し分ける
すべての記事の最後に同じ「お問い合わせはこちら」を置くと、まだ情報を集めている段階の人には重すぎ、頼む直前の人には遠回りになります。
記事の型ごとに、記事の途中と最後に置く案内を決めておきます。
| 記事の型 | 記事の途中に置く案内 | 記事の最後に置く案内 |
|---|---|---|
| 用語・基本の解説 | 関連する詳しい記事 | 選び方のチェックリストの資料 |
| 悩み・課題の解決 | 原因ごとの詳しい記事 | チェックリストの資料、無料の相談 |
| 費用・相場 | 費用の早見表の資料 | 見積りの依頼(用意するものの一覧つき) |
| 比較・選び方 | 事例の記事 | 比較表のテンプレートの資料、相談 |
| 進め方・流れ | よくある質問 | 見積りの依頼 |
| 事例 | 同じ業界のほかの事例 | 相談、事例集の資料 |
記事の途中の案内は、話題が切り替わる見出しの前に、一行の短い文で置くと読みの邪魔になりません。
記事の最後の案内は、その記事を読み終えた人が「次に知りたいこと」に合わせた文にします。
「費用の内訳が分かったら、自社の条件での見積りを」のように、記事の内容から続く言葉にすると、押し売りの印象になりません。
資料ダウンロードの作り方
BtoBのオウンドメディアでは、資料のダウンロードが問い合わせの手前の大事な入口になります。
会社案内をそのまま置くのではなく、担当者が社内の検討にそのまま使える資料にするのがこつです。
| 資料の種類 | 中身の例 | 置く記事 |
|---|---|---|
| 選び方のチェックリスト | 頼む先を選ぶときに確かめる項目を20個ほど並べ、チェック欄をつけたもの | 比較・選び方、用語の解説 |
| 費用の早見表 | 数量・材質・精度など、条件ごとの費用の幅と、費用が上がる条件の一覧 | 費用・相場 |
| 比較表のテンプレート | 候補の会社を並べて書き込める表。比べる項目は記入済み | 比較・選び方 |
| 事例集 | 業界別に、課題・対応・結果を1社1ページでまとめたもの | 事例 |
| 社内説明用の資料 | 導入の目的、費用、スケジュール、リスクと対策を数ページにまとめたもの。社名を書き換えれば使える形 | 進め方・流れ、比較 |
| サービス資料 | 対応範囲、進め方、料金の考え方、会社の情報 | すべての記事の最後(ほかの資料と並べて) |
資料は、最初から何種類も作る必要はありません。
最初の1つは、問い合わせに近い記事に置ける選び方のチェックリストか、費用の早見表がおすすめです。
どちらも記事の内容を整理し直すだけで作れるので、AIに記事から下書きを作らせ、人が仕上げれば、数時間で用意できます。
記事の最後の案内文の例
案内の文は、記事を読み終えた人が次に考えることに合わせて書きます。
型ごとの文の例を挙げます。
【費用の記事の最後】
費用の決まり方が分かったら、自社の条件で見積りを取ってみましょう。図面がない段階でも、形と数量が分かればおおよその費用をお伝えできます。
【比較の記事の最後】
候補の会社を比べるときは、比較表のテンプレートが使えます。この記事で紹介した項目を記入済みの表を、無料でダウンロードできます。
【事例の記事の最後】
同じような課題をお持ちでしたら、まずは状況をお聞かせください。進め方と費用の目安をご案内します。
どの文も、記事の中身から続く言葉で始め、案内の先で何が得られるかを一言で書いています。
「お気軽にお問い合わせください」だけの文より、読む人が自分に関係があると感じやすくなります。
フォームの項目は少なくする
資料ダウンロードのフォームは、項目が多いほど途中でやめる人が増えます。
最初は「会社名」「名前」「メールアドレス」の3つ程度にとどめ、どうしても知りたい項目があれば、選択式で1つだけ足します。
BtoBで足す価値があるのは、「検討の時期(3か月以内・半年以内・未定)」です。
営業が連絡する順番を決めるのに役立ちます。
見積りの依頼のフォームは反対に、見積りに必要な情報を入れてもらう場所です。
ただし、図面や仕様書のような添付は「あれば」にして、無くても送れるようにしておきます。
添付が必須だと、まだ資料がそろっていない早い段階の相談を逃してしまいます。
記事から問い合わせまでの流れの例
導線がつながると、読む人は次のような流れで問い合わせに進みます。
装置メーカーの購買の担当者が、試作の外注先を探す場合を考えます。
- 検索で記事を読む「試作 加工 費用」で検索し、費用の決まり方の記事を読みます。記事の途中にあった費用の早見表の案内が目に留まります。
- 資料を取る上司に説明するために、費用の早見表をダウンロードします。完了のページに並んでいた「加工会社の選び方」の記事も読みます。
- 社内で相談する早見表と選び方の記事の比較表を使って、上司に外注先の候補を説明します。
- 事例を見る1週間後に届いたメールの事例を読み、自社に近い装置メーカーの例があることを確かめます。
- 相談する図面がまだ固まっていない段階ですが、「図面がない段階で試作を相談する方法」の記事を読んで、相談のフォームから問い合わせます。
この流れの中で、担当者は一度も営業と話していませんが、問い合わせの時点で費用の決まり方も、頼む流れも理解しています。
BtoBのオウンドメディアの導線は、こうした流れが途中で切れないように、記事と資料とページをつないでおくことです。
資料を取った人へのフォロー
資料をダウンロードした人は、検討の途中にいる人です。
すぐに営業の電話をかけると、まだその段階ではない人に嫌がられることがあります。
資料を取った後の流れを、次のように決めておきます。
| 時期 | やること | 中身 |
|---|---|---|
| ダウンロードの直後 | 完了のページで次の案内をする | 資料のリンクと一緒に、関連する記事2〜3本と事例を並べる |
| 当日 | お礼のメールを送る | 資料のリンク、資料の使い方、質問があれば返信してよいこと |
| 1〜2週間後 | 関連する情報を送る | 資料の内容に近い事例か、進め方の記事を1本 |
| 検討の時期が「3か月以内」の人 | 営業が連絡する | 資料を見て気になった点がないか、条件に合わせた相談ができること |
| それ以降 | 月1回のお知らせに入れる | 新しい記事や事例のまとめ。配信の停止を簡単にできるようにする |
メールを送る前提で連絡先を受け取る場合は、フォームでそのことを分かるように伝え、プライバシーポリシーへのリンクを置いておきます。
サービス・事例のページを整える
記事から案内する先のページが弱いと、導線は途中で切れます。
オウンドメディアを始める前か、始めてすぐのうちに、次のページを確かめておきます。
- サービスのページ:対応できること・できないこと、進め方、料金の考え方、問い合わせのときに用意するものが書かれているか
- 事例のページ:業界や課題で絞り込めるか。1件ごとに課題・対応・結果がそろっているか
- 会社の情報のページ:所在地、設備、対応地域、代表者や技術者の紹介があるか。BtoBでは、取引先として信頼できるかを確かめるために必ず見られる
- 問い合わせのページ:返事が来るまでの目安の日数と、問い合わせた後の流れが書かれているか
問い合わせへの返事の早さを決めておく
記事と導線を整えても、問い合わせへの返事が遅ければ、お客様はほかの会社に移ります。
BtoBでは、担当者が複数の会社に同時に問い合わせていることが多いからです。
「平日は1営業日以内に返事をする」「営業時間外の問い合わせには、受け付けたことと返事の目安を自動で返す」と決め、問い合わせのページにもその目安を書いておきます。
返事の担当者が出張や休みのときに誰が代わるかも、あわせて決めておきましょう。
計測の設定
導線がうまく働いているかは、GA4のキーイベントで確かめます。
資料のダウンロードの完了、見積りの依頼の送信、相談の申し込みを、それぞれ別のキーイベントとして印をつけておくと、記事ごとに「資料を取った人が何人いたか」「見積りまで進んだ人が何人いたか」を分けて見られます。
アナリティクスのヘルプによると、キーイベントは標準のプロパティで30個まで設定できます。
キーイベントの名前は、「資料_費用早見表」「資料_選び方チェックリスト」「相談の申し込み」「見積りの依頼」のように、何が起きたかが一目で分かる名前にしておくと、月次の確認表に写すときに迷いません。
資料を増やしたときも、同じ決まりで名前をつけていきます。
事例記事・比較記事の作り方

BtoBの検討の終盤で必ず読まれるのが、事例と比較です。
どちらも、作り方を間違えると信頼を落とす記事でもあります。
事例記事の取材項目
事例記事は、お客様に話を聞いて書くのがいちばんです。
30分〜1時間の取材で、次の項目を聞きます。
項目を先にお客様に送っておくと、話がまとまりやすくなります。
- 会社と担当者のこと業種、規模、担当者の役割。記事の読む人が「自社に近いか」を判断する材料になります。
- 頼む前に困っていたことどんな課題があり、どんな影響が出ていたか。数字で言えるものがあれば聞きます。
- ほかに検討した方法社内でやる、ほかの会社に頼むなど、比べた選択肢と、選ばなかった理由。
- 当社を選んだ理由決め手になった点と、決める前に不安だった点。
- 進め方で印象に残ったことやりとりの中で、よかった点と、改善してほしい点。
- 結果何がどう変わったか。数字で言えるものと、数字にならない変化の両方を聞きます。
- 同じ悩みを持つ会社へのひとこと読む人に向けた、お客様自身の言葉。
取材の後、原稿は必ずお客様に確認してもらい、社名・名前・写真を出してよいかを文書で確かめます。
改善してほしい点も、お客様が了解すれば載せたほうが、記事の信頼が上がります。
事例記事の見出しの組み立て
取材した内容は、次の見出しの順に並べると、読む人が自社に近いかをすぐに判断でき、最後まで読まれやすくなります。
- タイトル:業種と課題と結果を入れる(例:装置メーカーのアルミ部品の試作を、図面の相談から2週間で納めた事例)
- 冒頭の要約:会社の概要、課題、対応、結果を4行ほどの囲みにまとめる。ここだけ読んでも分かるようにする
- 頼む前の課題:困っていたことと、その影響
- 当社を選んだ理由:ほかに比べた方法と、決め手
- 進め方:問い合わせから納品までの流れと、途中で工夫したこと
- 結果:変わったことを、数字と言葉の両方で
- お客様の声:取材で聞いた言葉をそのまま
- 担当者から:同じ課題を持つ会社への一言と、相談の案内
社名を出せないときの書き方
BtoBでは、取引先が社名を出せないことのほうが多いくらいです。
その場合でも、次のように書けば、読む人にとって役立つ事例になります。
- 社名の代わりに「中部地方の自動車部品メーカー(従業員約200人)」のように、業種・地域・規模を書く
- 課題・対応・結果の流れは、社名を出す事例と同じように具体的に書く
- 数字は、お客様の了解を得た範囲で、割合や期間で書く
- お客様が特定されそうな細部(独自の製品名、珍しい設備など)はぼかす
どの書き方の場合も、実際の取引に基づいて書きます。
実際にない事例や、複数のお客様の話を混ぜて1社の話のように書くことはしません。
比較記事を公平に作る
比較記事は、頼む先を比べている人が必ず読む記事です。
一方で、自社が売っている側なので、書き方を誤ると「自社に都合のよい比較」と受け取られます。
自社に都合のよい比較は逆効果
比べる項目を自社が勝つものだけにしたり、他社の情報を古いまま載せたりすると、読む人はすぐに気づきます。
BtoBの担当者は、ほかの会社のサイトも必ず見ているからです。
他社の料金や仕様を載せるときは、公式のページで確かめた日付と出どころを書き、確かめられないことは書かないようにしましょう。
公平な比較記事にするために、次の順で作ります。
- 比べるのは「会社」より「方法」:特定の会社を並べるより、「社内でやる」「専門の会社に頼む」「別の方法を使う」のように方法を比べるほうが、公平に書きやすく、情報も古くなりにくい
- 比べる項目は読む人が決める項目にする:価格、納期、品質の確かめ方、対応できる量、相談のしやすさなど、営業の場でお客様が実際に気にする項目を選ぶ
- 自社の方法が向かない場面も書く:「数万個以上の量産なら、専門の量産工場のほうが向いています」のように書く
- 判断の目安で終える:「〇〇の場合はA、〇〇の場合はB」と、読む人が自分の条件で選べる形でまとめる
比較表の項目の例を挙げます。
試作の加工を頼む方法を比べる場合です。
| 比べる項目 | 社内で加工する | 試作専門の会社に頼む | 量産の工場に頼む |
|---|---|---|---|
| 向いている数量 | 数個 | 1個〜数百個 | 数千個以上 |
| 1個あたりの費用 | 設備があれば安い | 数量が少ないほど割高 | 数量が多いほど安い |
| 納期 | 社内の空き次第 | 短い納期に対応しやすい | 準備に時間がかかる |
| 設計の相談 | 社内で完結 | 図面の段階から相談しやすい | 図面が固まってからが基本 |
| 向いている場面 | 簡単な形状を急いで作る | 形状や材質を試しながら決めたい | 仕様が決まり、数をそろえたい |
この表は方法ごとの一般的な傾向を示したもので、実際の記事では、自社や取引先の実際の数字・条件をもとに書きます。
実在する会社のメディアの形

BtoBの会社が、どんな形でオウンドメディアや情報のページを運営しているかを、公式サイトで確かめられる範囲で紹介します。
どの会社も、記事の形と問い合わせへの道筋が、自社の商売に合わせて作られています。
成果の数字は、公式に確かめられた情報がないため載せていません。
東海バネ工業:技術の情報・現場の読み物
東海バネ工業は、1個から注文できる受注生産を中心にしたばねのメーカーです。
公式サイトには、ばねの種類ごとの計算式や設計の注意点をまとめた技術・計算の情報があり、設計の担当者が手元で使える内容になっています。
あわせて「ばね探訪」という読み物があり、同社のばねが使われているものづくりの現場を訪ねてレポートしています。
サイトには、ばねの設計の依頼、相談の窓口(Q&Aの掲示板)、サポート資料のダウンロードといった入口も用意されています。
技術の情報で設計の担当者に役立ち、現場の読み物で会社の姿を伝え、相談の入口で問い合わせにつなぐ形です。
カオナビ:用語集・資料ダウンロード
カオナビは、人事の担当者向けに「人事用語集」を公開しています。
人事評価やタレントマネジメントなど、人事の仕事で出てくる言葉を解説するページです。
ページには資料ダウンロードの案内があり、製品の資料、料金、見積りへのリンクも置かれています。
用語を調べに来た人事の担当者に、まず役立つ情報を渡し、関心がある人を資料と製品の案内へ進める形です。
この記事の「用語・基本の解説」の型と、「資料ダウンロード」の導線を組み合わせた例といえます。
サイボウズ:製品の外側のテーマで読者を集める
サイボウズは「サイボウズ式」というメディアを運営しています。
サイトのタイトルは「新しい価値を生み出すチームのメディア」で、チームワーク、マネジメント、人事制度、働き方などを主なテーマにしています。
製品の使い方ではなく、製品を使う人たちが関心を持つ「チーム」「働き方」というテーマで記事を出している点が特徴です。
こうした形は、すぐの問い合わせより、会社の考え方を知ってもらうことに向いています。
中小企業が最初に真似る形ではありませんが、自社の得意分野の周りにある話題まで視野を広げると、記事の幅が出ることが分かります。
自社に当てはめるときの考え方
ほかの会社のメディアを参考にするときは、次の3つを順に確かめると、自社に合う形が選べます。
- お客様は誰で、何を調べているか:設計の担当者が技術の情報を調べているなら東海バネ工業のような技術資料、担当者が用語を調べているならカオナビのような用語の解説が入口になる
- 自社が出せる情報は何か:計算式や材質の表、現場の写真、取引先への取材など、自社の手元にある材料から形を決める
- 読んだ人に何をしてもらうか:設計の相談、資料のダウンロード、見積りなど、受け皿をどこに置くかを決める
3つのうち1つでも決まらないうちは、ほかの会社の形を真似ても、記事を読んだ人の行き先がなくなります。
特に3つ目の受け皿は、記事を書き始める前に用意しておきましょう。
地方の中小企業なら、技術の情報と事例、よくある質問を組み合わせ、受け皿を設計や見積りの相談にする形が、少ない本数でも始めやすい組み合わせです。
3社から学べること
| 会社 | 中心の記事の型 | 問い合わせへの道筋 | 中小企業が取り入れやすい点 |
|---|---|---|---|
| 東海バネ工業 | 技術資料・計算、現場の読み物 | 設計の依頼、相談の窓口、資料ダウンロード | 自社の技術の知識を、設計の担当者が使える形で出す |
| カオナビ | 用語・基本の解説 | 資料ダウンロード、製品の資料・見積り | 用語の解説から資料へ案内する |
| サイボウズ | 製品の周りのテーマの読み物 | 会社と製品を知ってもらう | 得意分野の周りの話題まで記事の幅を広げる |
3社とも、自社の商売でお客様がどんな情報を求めているかから記事の形を決めています。
形だけを真似るのではなく、自社のお客様が検討の途中で何を調べているかを先に確かめましょう。
中小企業の進め方

人も予算も限られる中小企業では、最初から大きなメディアを目指すより、問い合わせに近い記事から少しずつ積み重ねるほうが確実です。
6か月の進め方の例を示します。
| 時期 | やること | この時期の終わりにできているもの |
|---|---|---|
| 1か月目 | 営業担当から、商談でよく聞かれることを集める。狙う言葉を調べ、費用・比較・進め方・事例の4つの型で記事の案を出す | 狙う言葉の一覧、最初の10本の計画 |
| 2か月目 | サービスのページと問い合わせのページを整える。費用と比較の記事を2〜3本書く | 受け皿のページ、最初の記事 |
| 3か月目 | 選び方のチェックリストか費用の早見表を、資料として作る。記事を公開し始める | 資料1つ、記事5本ほど |
| 4か月目 | お客様に事例の取材を頼む。進め方とよくある質問の記事を書く | 事例の取材の予定、記事8本ほど |
| 5か月目 | 事例記事を公開する。営業担当に、記事を商談で使ってもらう | 事例1〜2本、記事10本ほど |
| 6か月目 | 数字を振り返り、資料を取った人と問い合わせた人の記事を確かめる。次の6か月の計画を立てる | 振り返りの結果、次の計画 |
月2本ほどのペースですが、BtoBでは本数より、問い合わせに近い記事と、受け皿のページ・資料がそろっていることのほうが大事です。
立ち上げの細かい手順は「オウンドメディアの立ち上げ」の記事で解説しています。
最初の10本の例
金属部品の試作加工の会社が、6か月で出す最初の10本を並べると、たとえば次のようになります。
問い合わせに近い型を前半に、事例を取材ができた後半に置いています。
| 順 | 記事 | 型 | 記事の後の案内 |
|---|---|---|---|
| 1 | 試作の加工費用はどう決まるか | 費用・相場 | 費用の早見表、見積り |
| 2 | 試作の加工会社の選び方と、確かめる10項目 | 比較・選び方 | 選び方のチェックリスト |
| 3 | 試作は社内でやるか、外注するか | 比較・選び方 | 相談 |
| 4 | 試作を頼むときの流れと、用意するもの | 進め方・流れ | 見積り |
| 5 | 図面がない段階で試作を相談する方法 | 進め方・流れ | 相談 |
| 6 | 小ロットの加工で単価を下げる工夫 | 悩み・課題の解決 | 費用の早見表 |
| 7 | アルミの材質ごとの強さと加工のしやすさ | 技術資料・計算 | 設計の相談 |
| 8 | 試作の納期を短くするために発注側ができること | 悩み・課題の解決 | 相談 |
| 9 | 事例:装置メーカーの部品を2週間で試作した例 | 事例 | 相談、事例集 |
| 10 | 試作の加工でよくある質問 | よくある質問 | 見積り |
10本のうち、用語の解説は入れていません。
用語の解説は、11本目以降に、ほかの記事で何度も出てくる言葉から順に足していきます。
記事を営業に生かす
BtoBのオウンドメディアは、営業と結びつけると効果がはっきり出ます。
次の2つの流れを作っておきます。
- 営業から記事へ:営業担当が商談で聞かれたこと、説明に困ったこと、失注した理由を、毎月共有の表に書いてもらい、記事の企画に使う
- 記事から営業へ:書いた記事を営業担当に知らせ、商談の前に送る資料や、商談の後のお礼のメールに添える記事として使ってもらう
商談の前に記事を送っておくと、お客様は基本的なことを理解したうえで商談に来るため、商談の時間を具体的な相談に使えます。
資料をダウンロードした人に営業が連絡するときも、「〇〇の記事と資料をご覧いただいたようですが」と、相手の関心に合わせて話を始められます。
社長や技術者の名前で書く
BtoBの記事は、誰が書いたかが信頼に直結します。
技術や費用の記事は、社長や技術の責任者の名前を書き手、または確認者として出すと、読む人が「この会社に聞けば分かる」と判断しやすくなります。
Googleの「ユーザー第一のコンテンツ」のガイドでも、読む人が期待する場面では、書いた人の情報を正しく示すことが勧められています。
書き手を出すときは、記事の最後に、名前、役職、経験の年数や担当してきた分野を短く書き、その人の紹介ページにつなげます。
実際の文章はAIや編集担当が書いても、中身を確かめたのがその人であれば、確認者として名前を出せます。
実在しない書き手や、事実と違う経歴を書くことはしません。
Googleも、作り手の名前や経歴を偽ることを、ページの質を下げるものとして挙げています。
いまのお客様にも記事を届ける
BtoBでは、新しい取引先だけでなく、いまのお客様からの追加の注文や、別の部署の紹介も大事な売上です。
いまのお客様が知らない自社の対応範囲(「試作だけでなく、少量の量産もできる」「表面処理まで一括で頼める」など)を記事にして、定期的なお知らせで届けると、追加の相談につながることがあります。
営業担当が訪問のときに「こういうこともできます」と記事を見せるのも有効です。
新しいお客様向けの記事と同じものを使えるので、追加の手間はほとんどかかりません。
展示会や紙の営業と組み合わせる
BtoBでは、展示会やカタログ、訪問の営業も引き続き大事な接点です。
オウンドメディアを始めたら、これらとも結びつけます。
展示会で配るチラシや名刺の裏に、得意分野の記事や資料のQRコードを入れておけば、会場で話しきれなかったことを後で読んでもらえます。
展示会で名刺を交換した相手へのお礼のメールにも、話題に合う記事を1本添えましょう。
記事が、会った後の関係をつなぐ道具になります。
少人数で回すときのAIの使い方
専任の担当者がいない会社では、AIに手伝ってもらう工程を決めておくと、本業の合間でも続けられます。
BtoBで特に役立つのは次の使い方です。
- 営業から集めた質問の一覧を渡し、記事の型ごとに分けた記事の案を作らせる
- 社長や技術者に15分ほど話を聞いた録音の書き起こしを渡し、記事の下書きにさせる
- 書いた記事から、選び方のチェックリストや費用の早見表の資料の下書きを作らせる
- 事例の取材の項目と、お客様への依頼のメールの文案を作らせる
当社が運営するメディア「AI・Web実務研究所」でも、AIを使って調べる、構成を作る、書く、点検する、古くなった情報を更新する、という流れで記事を作っています。
BtoBの記事では、技術や費用の数字が1つ違うだけで信頼を落とします。
Googleも、生成AIで作った内容はすべて人が事実を確かめて見直すことが大事だとしています。
数字と技術の中身は必ず社内の詳しい人に確かめてもらう工程を外さないようにしましょう。
成果の測り方

BtoBでは、記事を読んでから問い合わせるまでに時間がかかり、問い合わせから受注までにも時間がかかります。
訪問の数だけを見ていると、成果が分からないまま判断することになるので、段階ごとに数字を分けて見ます。
| 段階 | 見る数字 | 見る場所 |
|---|---|---|
| 読まれる | 表示回数、クリック数、狙った言葉の掲載順位 | Search Console |
| 関心を持たれる | 記事からサービスのページ・事例のページへ移った数 | GA4 |
| 名乗ってもらう | 資料のダウンロード数、相談の申し込み数 | GA4のキーイベント、フォームの記録 |
| 商談になる | 資料を取った会社・相談した会社のうち、商談になった数 | 営業の記録 |
| 受注する | 記事・資料がきっかけになった受注の数と金額 | 営業の記録 |
最初の数か月は、上の2段(読まれる・関心を持たれる)を中心に見て、資料のダウンロードが出始めたら下の段に重心を移します。
記事経由の商談を追いかける
資料のダウンロードや問い合わせから、商談・受注までを追いかけるには、計測の道具だけでなく、営業の記録とのつなぎが必要です。
中小企業でもできる方法をまとめます。
- フォームに「何を見て知ったか」を入れる選択式で「検索」「記事」「資料」「紹介」「展示会」などを選んでもらいます。
- 資料を取った会社を一覧にする資料のダウンロードのフォームの記録を、営業の顧客の一覧(表計算ソフトや顧客管理の道具)に入れ、「きっかけ:〇〇の資料」と書いておきます。
- 商談の最初に聞く営業担当が初回の商談で「当社を知ったきっかけ」と「読んだ記事」を聞き、顧客の一覧に書き込みます。
- 3か月ごとに突き合わせる顧客の一覧の「きっかけ」の列を集計し、記事や資料がきっかけの商談と受注を数えます。
この方法なら、問い合わせが電話で来た場合や、資料を取ってから何か月もたって問い合わせが来た場合も、記事の成果として数えられます。
記事がきっかけの受注が1件でも出れば、その金額と、メディアにかけた費用を比べられるようになります。
経営者への報告の形
BtoBのメディアの報告は、3か月ごとに、次の3つの数字と、その中身でまとめると伝わります。
- 資料を取った会社の数:業種や規模の内訳と、狙っているお客様に近い会社がどれだけ含まれているか
- 記事や資料がきっかけの商談の数:どの記事・資料がきっかけだったか
- 記事や資料がきっかけの受注の数と金額:まだ0件でも、商談の進み具合を書く
数字に加えて、資料を取った会社の名前や、商談で「記事を読んだ」と言われた話を1つ2つ添えると、経営者にもメディアの働きが具体的に伝わります。
検索の数字だけで判断しない
BtoBの記事は、検索からの訪問が少なくても、営業が商談で送ったり、展示会の後に読まれたりして役に立っていることがあります。
Search ConsoleやGA4の数字が小さい記事を消したり後回しにしたりする前に、営業担当に「この記事を使っているか」を聞いてみてください。
報告の場には、営業の責任者にも出てもらうと、記事と営業の動きを合わせる相談がその場でできます。
BtoBでつまずきやすい点
数字を追いかけていくと、BtoBのオウンドメディアでよく起きるつまずきが見えてきます。
どれも、記事を書く前に気をつけておけば防げるものです。
| つまずき | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| 製品の紹介ばかりになる | 社名や製品名を知らない人には見つけてもらえない | お客様が検討の途中で調べる言葉から記事を作る |
| 専門用語だらけになる | 購買や経営の担当者が読めず、社内の説明に使われない | 専門用語は初めて出るところで言い換える。読む人の立場を記事ごとに決める |
| 受け皿のページが弱い | 記事から移った先で、何を頼めるか分からずに離れる | サービス・事例・会社の情報のページを先に整える |
| 資料を取った人を放っておく | 関心のある会社の連絡先が、使われずに残る | 資料を取った後の流れを決め、営業と分担する |
| 営業が記事を知らない | 商談で記事が使われず、お客様の質問も記事に戻ってこない | 公開した記事を毎回営業に知らせ、質問を集める表を一緒に使う |
検討期間の長さを考えて判断する
BtoBでは、資料を取った会社がすぐに商談にならなくても、半年後、1年後に予算がついて連絡が来ることがよくあります。
資料を取った会社の一覧は、商談にならなかったものも消さずに残し、季節の案内や新しい記事の紹介を送る相手として使います。
成果を判断するときも、月ごとの数字だけでなく、資料を取った会社が、その後どうなったかを3か月・半年の単位で追いかけましょう。
よくある質問
BtoBの専門的な商材でも、検索されていますか?
商材によりますが、頼む先を探すときの言葉(「〇〇 加工 依頼」「〇〇 システム 比較」「〇〇 費用」など)は、回数は少なくても検索されていることが多くあります。
キーワードのツールで検索数を確かめ、上位にどんなページが出ているかを見てから判断してください。
検索数がほとんど無い場合でも、営業が商談で送る資料として記事を作る価値はあります。
価格を公開できません。
費用の記事は書けますか?
書けます。
価格そのものではなく、価格が何で決まるか(数量、材質、精度、納期など)と、条件によってどう変わるかを説明します。
条件ごとの幅や、費用が上がりやすい条件の例を示すだけでも、担当者が社内で予算を相談する材料になります。
競合に自社のノウハウを知られてしまいませんか?
記事で出すのは、お客様が判断するために必要な情報です。
手順や考え方を公開しても、それを実際にできる設備や人、経験までは真似できません。
どうしても出せない社内の手順や数字は、出さない範囲を先に決めておき、確認担当がその範囲で原稿を確かめる形にしましょう。
資料のダウンロードは、記事の途中に置いても大丈夫ですか?
記事の内容に合った資料なら、途中に置くほうが目に留まりやすくなります。
ただし、記事の冒頭や、読み始めてすぐの位置に大きく置くと、読む邪魔になります。
話題の区切りに一行の案内を置き、記事の最後に詳しい案内を置く形がおすすめです。
事例を載せてくれるお客様がいません。
社名を出さない形なら了解してもらえることが多くあります。
業種・地域・規模で書き、課題・対応・結果を具体的に書けば、読む人にとって十分に役立ちます。
取材の時間が取れない場合は、メールでの質問への回答をもとに書く方法もあります。
業界が狭いので、書くことがすぐ尽きませんか?
業界が狭くても、お客様の質問は少しずつ変わっていきます。
営業や電話を受ける人から、聞かれたことを毎月集める仕組みを作っておけば、記事の案は続きます。
新しい記事が思いつかない時期は、すでにある記事の情報を新しくする更新に時間を使いましょう。
比較記事で、他社の名前を出してもよいですか?
公式のページで確かめた事実を、確かめた日付と一緒に書くなら、出すこと自体はできます。
ただし、他社の料金や仕様は変わることが多く、古いまま残ると信頼を落とします。
中小企業の場合は、特定の会社を並べるより、方法や頼む先の種類を比べる記事のほうが、公平に書きやすく、更新の手間も少なくなります。
記事は誰が書くのがよいですか?
文章を書く作業は、編集担当やAI、外部のライターに任せてかまいません。
大事なのは、中身を社内の詳しい人が出し、確かめることです。
社長や技術者に15分ほど話を聞き、その内容をもとに下書きを作り、最後にもう一度本人に確かめてもらう形が、少人数の会社では続けやすい方法です。
BtoBでもSNSは必要ですか?
必須ではありません。
BtoBでは、SNSより営業のメールや展示会、既存のお客様へのお知らせのほうが、記事を読んでほしい相手に直接届くことが多くあります。
SNSを使う場合は、記事を知らせる場所として使い、記事と資料は自社のサイトに置きましょう。
採用のための記事も同じメディアに入れてよいですか?
読む人がまったく違うため、問い合わせのためのメディアとは分けたほうが分かりやすくなります。
採用の記事は、採用サイトの中に別のまとまりとして置くのがおすすめです。
AI検索の広がりで、BtoBの記事は読まれなくなりませんか?
用語の意味のように短い答えで済む情報は、AIの答えだけで満足する人が増えるかもしれません。
一方で、費用の内訳、比較の表、事例、進め方のように、社内で説明するための具体的な情報は、記事まで読みに来る理由が残ります。
Googleは、AIによる概要に出るために特別な対策は要らず、これまでの基本が引き続き大事だと案内しています。
BtoBでは、問い合わせに近い具体的な記事に力を入れることが、そのままAI検索への備えにもなります。
まとめ
この記事のまとめ
- BtoBは決める人が複数いて、検討が長い。担当者が社内で説明に使える記事が読まれる
- 中小企業は、専門の狭さと現場の情報を生かせば、大手と違う土俵で記事を書ける
- 最初に力を入れるのは、費用・比較・進め方・事例の4つの型
- 導線は、関連記事・資料ダウンロード・相談・見積りをハードルの順に用意し、記事の型ごとに出し分ける
- 事例は実際の取引に基づき、比較は自社が向かない場面も書いて公平に作る
- 成果は、資料を取った会社がその後どうなったかまで、営業の記録とつないで追いかける
BtoBのオウンドメディアは、営業が毎日していることを、検索で見つけてもらえる形に置き換える仕事でもあります。
まずは営業が商談で毎回説明していることを、1本の記事にするところから始めてみてください。
INTERCREATE JAPANでは、記事の計画と資料ダウンロードの設計から、AIを使った記事づくり、AI検索への対応まで、BtoBのオウンドメディアの運用をお手伝いしています。
問い合わせにつながる記事の並べ方から相談したいときも、お気軽にご連絡ください。
参考・出典
INTERCREATE JAPAN