Microsoft Copilotに財務向け機能|Excelの照合と仕訳下書きで何が変わるか
この記事でわかること
- Microsoftが発表した財務向けの機能
- 経理の作業で何を任せられるか
- 機能ごとの提供状況と、Frontierの条件
- 日本の中小企業での試し方
- 人が確認すること
- 公式に書かれていないこと
Microsoftは2026年10月29日、Microsoft Copilotに財務向けのスキルと外部サービスとの連携(プラグイン)を25以上追加したと発表しました。
口座の照合や仕訳の下書きなど、経理の担当者が毎月行う作業が対象に入っています。
月次決算の時期に、Excelと帳票を行き来して数字を合わせている会社は少なくありません。
ただ、今回の発表は米国の大きな会社の例が中心で、経理向けの主な機能はまだ先行提供です。
この記事では、発表の内容と提供状況を整理したうえで、日本の中小企業が試すときに何を確かめればよいかを説明します。
内容は2026年11月2日時点の情報です。
発表された内容

今回の発表は、Excelの中のCopilotと、複数の手順の作業を任せるCoworkの両方に関わります。
Microsoftは2026年6月にExcelのCopilotへ財務スキルを入れていて、今回はその範囲を広げた形です。
対象は大きく3つに分かれています。
- 会社の経理の作業(照合、仕訳、実績の報告など)
- 投資や資本市場の分析(投資案件の検討、買収の試算など)
- 財務部門の作業(月次決算のレビュー、予算と見通しの確認など)
中小企業に関係が深いのは、1つ目と3つ目です。
投資銀行やプライベートエクイティ向けの機能は、多くの読者には直接関係しません。
Microsoftによると、経理のスキルを限られた先行利用者に提供した7日間で、8,000人以上が44,000回以上使いました。
これは同社の発表の数字で、作業がどれだけ減ったかを示すものではありません。
経理の作業で変わること

Microsoftが例に挙げている作業を、日本の経理の場面に置き換えると次のようになります。
右の列は、発表の内容をもとにした当社の解釈です。
| 発表の機能 | できるとされていること | 日本の会社で思い浮かぶ作業 |
|---|---|---|
| 口座の照合 | 残高と取引を比べ、差異を見つけ、調整項目を確認用に準備する | 通帳の明細と会計の帳簿の突き合わせ、売掛金の入金消込の確認 |
| 仕訳の下書き | 未払い計上、振替、配賦、戻し、定期的な仕訳を、必要な入力と貸借の一致を確かめながら下書きする | 毎月の未払費用の計上、部門ごとの経費の振り分け |
| 実績の報告 | 計画と比べて実績を分析し、変化の理由を説明する報告を準備する | 予算と実績の差を説明する月次資料 |
| 決算のレビュー資料 | 進捗をまとめ、遅れやリスクを見つけ、差異の説明と連絡の下書きを作る | 月次決算の遅れの確認と、各部門への問い合わせの下書き |
今回の発表で目を引くのは、Excelの変更の履歴に関わる機能です。
Excelでは、経理の機能を使うときに、Copilotが何をなぜ変えたかをチャットの履歴に残す「監査証跡」を選べるようになります。
誰がいつ変更したかを要約したり、特定の変更だけを取り消したりできるとも説明されています。
経理の仕事では、合っているかどうかだけでなく、なぜその数字になったかをあとから説明できることが重要です。
AIの作業の記録が残るかどうかは、経理で使ってよいかを判断するときの大事な条件になると当社は考えます。
提供状況と使うための条件

機能によって、提供の段階が異なります。
発表の最後に書かれている内容は次のとおりです。
| 機能 | 提供の段階 |
|---|---|
| ExcelのCopilotとCoworkの経理機能 | Frontier(先行提供) |
| ExcelのCopilotの財務スキル | 一般提供 |
| Coworkの資本市場・財務プラグイン | 一般提供 |
| Dynamics 365のERPプラグイン | プラグインの一覧から順次提供 |
| Fabric IQ(Cowork) | 一般提供 |
| 外部サービスのプラグイン | プラグインの一覧から順次提供 |
つまり、照合や仕訳の下書きといった経理の機能は、Frontierに参加しないと使えません。
Frontierは、正式に提供する前の機能を先に試せるMicrosoftの制度です。
プレビューの機能なので、内容が変わることがあると案内されています。
会社でFrontierを使うには、管理者が設定で対象の利用者を選びます。
Frontierに登録するだけならCopilotのライセンスは要りませんが、Copilotの先行機能を使うにはCopilotのライセンスか、それを含む契約が必要です。
外部サービスとの連携
会計ソフトではIntuit QuickBooks、Xero、Zoho Booksが連携先に挙がっています。
日本で広く使われている会計ソフトの名前は、今回の発表には書かれていません。
外部サービスを使う場合は、それぞれの契約や認証、管理者の設定が別に必要になることがあります。
日本の中小企業での試し方

すでにMicrosoft 365とCopilotを使っている会社なら、新しい仕組みを入れなくても試せる部分があります。
当社としては、いきなり本番の決算に使うのではなく、次の順番を勧めます。
- 過去の月で試すすでに締めた月の明細と帳簿を使い、差異の見つけ方が人の結果と合うかを比べます。
- 下書きまでに限定する仕訳を直接会計ソフトへ入れず、Excelの下書きを経理の担当者が確認してから入力します。
- 記録の残し方を決める監査証跡を使う場合は、どこに残るか、誰が見られるかを確かめます。税理士に見せる資料の形も決めておきます。
- 効果を測る照合の時間と、見つけた差異の数を2〜3か月分記録し、続けるかを判断します。
税理士に顧問をお願いしている会社は、AIで下書きした仕訳をどの段階で確認してもらうかを先に相談しておくと、あとの手戻りを減らせます。
人が確認すること

Microsoftも、推奨、判断、承認、実行は財務の担当者が責任を持つと説明しています。
日本の経理で特に確認が必要なのは、次の点だと当社は考えます。
| 確認する点 | 確認する理由 |
|---|---|
| 勘定科目と消費税の区分 | 日本の税区分やインボイスの扱いに正しく対応するかは、発表に書かれていない |
| 振込や入金の相手の名前 | カタカナの名義や略称を正しく突き合わせられるかは、自社のデータで試す必要がある |
| 締めた月の数字 | AIが過去の数字を変更していないかを、変更の履歴で確かめる |
| 元のデータの範囲 | Copilotは利用者が見られるデータだけを使うので、権限が足りないと集計が欠ける場合がある |
データの扱いについて、Microsoftは、プロンプトと回答をMicrosoft 365のサービスの範囲内で処理し、基盤モデルの学習には使わないと説明しています。
既存の権限や機密ラベルにも従うとされています。
一方で、外部サービスのプラグインを使うときのデータの扱いは、それぞれの提供元の条件を確かめる必要があります。
権限の設定を先に見直す
Copilotは利用者が見られるファイルを使えます。
給与や取引先の資料の共有範囲が広すぎる状態で使い始めると、見せるつもりのない情報が回答に出る可能性があります。
経理の資料を扱う前に、SharePointやOneDriveの共有の設定を確かめてください。
まだ分からないこと

2026年11月2日時点で、次のことは今回の発表と確認した公式ページから読み取れませんでした。
- 経理の機能が日本語の指示や日本語の帳票でどこまで使えるか
- 日本の会計基準、消費税、インボイスへの対応
- 経理の機能が一般提供になる時期
- 日本の会計ソフトとの連携の予定
- 財務のスキルの利用に、ライセンス以外の費用がかかるか
Microsoftは2026年11月17日から20日にIgniteというイベントを予定していて、関連する案内が増える可能性があります。
Copilot自体の料金とライセンスの種類は、下の記事で整理しています。
まとめ
この記事のまとめ
- Microsoftは2026年10月29日、Copilotに財務向けのスキルとプラグインを25以上追加したと発表した
- 照合や仕訳の下書きなどの経理の機能はFrontierの先行提供で、財務のスキルは一般提供
- Excelでは、AIが何をなぜ変えたかを記録する監査証跡を選べるようになる
- 日本語の帳票、消費税やインボイスへの対応は公式に確認できない
- 試すなら過去の月のデータで始め、仕訳は下書きまでにして人が確認する
経理のAI活用は、機能の新しさよりも、どの作業を任せて、どこで人が確認するかを決めることから始まります。
INTERCREATE JAPANでは、Excelや会計の業務を整理して、AIの使いどころを決めるところから相談を受けています。
参考・出典
INTERCREATE JAPAN