中小企業庁「AX実装ネットワーク」開始|無料の勉強会と伴走支援、対象地域と締切
この記事でわかること
- 中小企業庁が始めた「中小企業AX実装ネットワーク事業」の中身
- 今年度の対象地域・募集の数・締切・参加費
- 勉強会と伴走支援で何をするのか
- 応募の条件と、選ばれるときに見られる点
- 対象外の地域の会社が、まず取りかかれること
中小企業庁は、中小企業のAI活用を地域ぐるみで進める「中小企業AX実装ネットワーク事業」を始めました。
2026年10月19日に、事業の公式サイトが公開されています。
AIに関心はあっても、「何から始めればいいか分からない」という会社は少なくありません。
この事業は、そうした会社が無料の勉強会でAIの使い方を学び、希望する会社は専門家の伴走支援を受けながら、実際の業務にAIを入れるところまで進めるものです。
この記事では、中小企業庁のページ、事業の公式サイト、応募要項(PDF)をもとに、中身と応募の条件を整理します。
内容は2026年10月21日時点の情報です。
中小企業庁が「中小企業AX実装ネットワーク事業」を開始

AXは「AI Transformation」の略で、中小企業庁はこれを「AIを活用した経営の抜本的な改革」と説明しています。
事業の名前にある「ネットワーク」は、地域ごとに次のような人たちをつなぐ仕組みのことです。
- 地域の中小企業・小規模事業者
- AIサービスを提供する事業者、ITコーディネーター
- 商工会・商工会議所、よろず支援拠点、金融機関・税理士、自治体、大学・高専などの支援機関
中小企業庁のページによると、会社が自社の経営課題に合ったAIサービスと出会い、導入に向けた取り組みを始める場をつくることが目的です。
主催は経済産業省中小企業庁で、運営事務局は有限責任監査法人トーマツが務めます。
今年度(令和8年度)は実証事業として、全国のうち限られた地域で行います。
地域で生まれた事例は、最後に東京の全体発表会で共有し、全国に広げるとしています。
対象地域・募集の数・スケジュール

事業の公式サイトと応募要項に書かれている主な条件をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象地域 | 北海道帯広市、埼玉県草加市、静岡県掛川市、鳥取県、岡山県津山市、福岡県福岡市 |
| 対象企業 | 対象地域にある中小企業・小規模事業者などで、AIを使った業務改善や生産性の向上に関心がある事業者。AIの知識や利用の経験は問わない |
| 募集の数 | 勉強会は各地域50社程度。そのうち伴走支援は各地域20社程度 |
| 参加費 | 無料。会場までの交通費や、自社で有料のAIサービスを使う費用は自己負担 |
| 応募の締切 | 10月末頃まで(予定)。地域によって締切が違う場合があり、応募フォームで確かめる |
| 応募方法 | 事業の公式サイトの応募フォームから申し込む |
なお、応募要項(PDF)の「対象地域」には5つの市が書かれていて、鳥取県が入っていません。
一方で、中小企業庁のページと事業の公式サイトでは鳥取県も対象地域に入っており、勉強会の詳細は「決まり次第掲載」となっています。
鳥取県の会社は、応募フォームか運営事務局で確かめるのが確実です。
公式サイトに出ているスケジュールは次のとおりです(いずれも予定)。
| 時期 | やること |
|---|---|
| 10月末頃まで | 応募 |
| 11月上旬 | 選考・採択 |
| 11月 | 第1回・第2回の勉強会 |
| 2026年12月頃〜2027年2月頃 | 伴走支援(課題の整理 → AIの導入・実証)。希望する会社のみ |
| 2027年2月頃 | 第3回の勉強会(成果の共有) |
| 3月 | 全体発表会(東京) |
帯広市・草加市・掛川市・津山市・福岡市は、勉強会の開催案内(PDF)がすでに公式サイトに載っています。
締切まで時間がないので、対象地域の会社は早めに確かめてください。
勉強会と伴走支援で何をするのか

応募要項では、事業の中身を4つに分けて説明しています。
| 取り組み | 主な内容 |
|---|---|
| 勉強会 | AI・生成AIの基礎、中小企業での活用事例、自社の業務の棚卸し、AIを使うテーマの検討、プロンプト(AIへの指示文)を使った実践演習など |
| 伴走支援 | 選ばれた会社に、専門家などが個別に付く。AIを使うテーマの具体化、方針づくり、実証・導入、社内での定着までを支援 |
| 成果報告会 | 伴走支援で生まれたモデルケースを、地域ごとに発表。最後に全国で共有する場を設ける |
| コミュニティ | 参加企業や支援機関が情報を共有する場として、地域ごとに Slack(チャットのツール)のコミュニティを設ける予定 |
勉強会だけに参加することもできます。
伴走支援を受けたいときは、別に選考があります。
公式サイトのよくある質問では、まず勉強会に参加し、そのあと応募内容や選考の結果をもとに伴走支援の会社を決めると説明しています。
選ばれるときに見られる点
応募が多いときは、事業の目的に合っているか、自社の課題が具体的になっているか、AI活用への意欲、参加・実践への意欲、取り組みの効果が期待できるか、を総合的に見て選ぶとしています。
応募フォームでは、今抱えている経営・業務の課題、AIの使い方の現状、この事業で取り組みたいことを書きます。
「見積書づくりに毎月○時間かかっている」のように、困っている業務を具体的に書けるようにしておくと、勉強会でも伴走支援でも話が進みやすくなります。
日本の中小企業にとっての意味

ここからは当社の見立てです。
これまで国の中小企業向けのAI支援は、「デジタル化・AI導入補助金」のように、ツールを買う費用を補助する形が中心でした。
この事業は、お金ではなく「学ぶ場」と「一緒に進める人」を用意する点が違います。
AIの導入でつまずきやすいのは、ツールを選ぶ前の段階です。
どの業務に使えるのかが分からない、試したが社内に広がらない、という悩みは、補助金だけでは解決しにくいものです。
勉強会で業務の棚卸しから始め、伴走支援で実証と定着まで見る流れは、こうしたつまずきに合わせた作りになっています。
対象地域の会社にとっては、無料で専門家の支援を受けられる機会です。
応募の条件にAIの経験は入っていないので、まだ何も使っていない会社でも応募できます。
ただし、アンケートやヒアリング、効果の検証への協力が応募の条件になっている点は押さえておきましょう。
取り組みの事例は、会社に確認したうえで公式サイトや報告書で紹介される場合があります。
対象地域以外の会社は、今年度は参加できません。
中小企業庁は「各地域の取組を全国へ展開」するとしていますが、来年度以降に地域が広がるかどうかは、公式には書かれていません。
それまでの間は、勉強会の中身(業務の棚卸し → AIを使うテーマ決め → 小さく試す)を、自社で先に進めておくことができます。
- 業務を書き出す:毎週・毎月くり返している作業と、かかっている時間を一覧にする
- AIに向く作業を選ぶ:文章の下書き、資料の要約、データの集計など、手順が決まっているものから1つ選ぶ
- 使ってよい範囲を決める:入れてよい情報・いけない情報を決めてから試す
- 小さく試して測る:1か月使って、かかった時間がどう変わったかを記録する
ツールを買う費用が必要になったら、デジタル化・AI導入補助金などの補助金も検討できます。
注意点・まだ分からないこと

応募の前に、次の点を確かめておきましょう。
- 締切は「10月末頃まで(予定)」で、地域ごとに違う場合がある。応募状況によって変わることもある
- 事業所の所在地などの細かな条件は、地域ごとに決める場合がある
- 応募フォームを送っただけでは参加は決まらない。選考の結果はメールで届く
- 営業や勧誘を主な目的にした参加は断る場合がある、と書かれている。AIサービス事業者は、支援する側として別の形で関わる仕組み
- 事業は、特定の成果やAI導入の効果を保証するものではない、と応募要項に書かれている
公式に書かれていないこと(未確認)
伴走支援で使うAIサービスを誰がどう選ぶのか、その利用料が支援の中で出るのかは、公式には書かれていません(応募要項では、有料のAIサービスの費用は参加者の負担としています)。
来年度以降に対象地域が広がるかどうかも、今のところ分かりません。
気になる点は、運営事務局(ax-community@tohmatsu.co.jp)に問い合わせるのが確実です。
まとめ
この記事のまとめ
- 中小企業庁が「中小企業AX実装ネットワーク事業」を始め、2026年10月19日に公式サイトを公開した
- 今年度は帯広市・草加市・掛川市・鳥取県・津山市・福岡市が対象。勉強会は各地域50社程度、伴走支援は20社程度、参加は無料
- 応募の締切は10月末頃まで(予定)で、地域によって違う場合がある
- 勉強会で業務の棚卸しから学び、選ばれた会社は12月〜2月に専門家の伴走支援を受ける
- 対象外の地域の会社も、業務の書き出しと小さな試しは今から自社で始められる
国がAIの「導入の仕方」まで支援する事業を始めたことで、中小企業のAI活用は、ツール選びから業務の見直しへと話の中心が移りつつあります。
対象地域の会社は締切に気をつけて応募を検討し、それ以外の会社は、勉強会と同じ手順で自社の業務を見直してみましょう。
INTERCREATE JAPANでは、業務の棚卸しから、AIを使う業務の選び方、社内ルールづくりまでの相談を受けています。
参考・出典
INTERCREATE JAPAN