AIエージェント・業務活用

AI業務効率化の事例|自治体・企業・中小企業の成果と数字の読み方を解説

INTERCREATE JAPAN 編集部公開 2026.10.15

この記事でわかること

  • 公式ページで確かめられた、自治体・民間企業・中小企業の業務効率化の事例(何に使い、どんな数字が出たか)
  • 事例に共通する「効果が出やすい仕事」と、つまずきやすい点
  • 事例の数字(実績・見込み・目標・自己申告)の読み方
  • 文章の下書き・要約・集計・検索など、作業の種類別の活用例(想定例)
  • 自社で小さく試して、効果を測る手順
目次
  1. 事例の一覧と見方
  2. 取り上げる事例
  3. 数字の種類を見分ける
  4. 全社で使い始めた事例
  5. 横須賀市:全職員に配って効果と課題を測る
  6. 神戸市:133名で3か月試して、使い方を集める
  7. MIXI:個人利用から全社導入へ、1.5か月で切り替える
  8. ENEOSマテリアル:調査・設計・研修の分析に使う
  9. 大成建設:人事部が主導し、人財育成として進める
  10. Zenken:営業の準備時間を減らし、提案の数を増やす
  11. 立ち上げ方の違い
  12. 業務に合わせて作った事例
  13. LINEヤフー:社内文書を検索するツールと人事総務のツール
  14. 三菱UFJ信託銀行:マニュアルを読ませて問い合わせに答える
  15. 三菱UFJ銀行:提案書をほかの営業チームと安全に共有する
  16. みずほフィナンシャルグループ:スライド作成を内製のツールで支える
  17. 作り込んだ事例の共通点
  18. 中小企業の事例
  19. 岡田研磨:AIとの対話で業務アプリを作る
  20. 中小機構の調査から分かること
  21. 自社に近い事例の探し方
  22. 事例から分かること
  23. 効果が出ている仕事の特徴
  24. つまずきやすい点
  25. 数字を読むときの注意
  26. 規模に応じた参考の仕方
  27. 業務別の活用例(想定例)
  28. 想定例:社内の問い合わせに答える
  29. 想定例:営業の提案書のたたき台を作る
  30. 想定例:現場の点検記録を入力しやすくする
  31. 想定例:アンケートの自由記述を分類する
  32. 自社で試す手順
  33. 進め方
  34. 効果の測り方(計算例は想定)
  35. 1か月の試し方(目安)
  36. 社内で決めておくこと
  37. よくある質問
  38. まとめ

「AIで業務を効率化したという話は聞くけれど、実際にどの会社が、どんな仕事で、どれくらい時間を減らしたのか知りたい」「自社でも同じように効果が出るのか判断したい」と考えている方は多いのではないでしょうか。

この記事では、生成AI(文章や表をつくってくれるAI)で業務の効率化に取り組んでいる、自治体・民間企業・中小企業の事例を紹介します。企業名や数字は、その組織や提供元の公式ページで確かめられたものだけを載せています。確かめられなかった例は載せていません。

後半では、事例に共通すること、数字の読み方、作業の種類別の活用例(想定例)、自社で小さく試す手順をまとめました。内容は2026年10月時点の公式情報をもとにしています。想定例には必ず「想定例」と書き、実際の事例と区別しています。

事例の一覧と見方

机に資料を広げ、業務効率化の事例を読み比べる会社員

個別の事例を読む前に、この記事で取り上げる事例と、数字の見方を先にそろえておきます。事例ごとに「誰が」「何に」使い、「どんな数字が出たのか」を整理すると、自社に近いものを探しやすくなります。

取り上げる事例

公式ページで内容を確かめられた事例を、次の表にまとめました。「おもな数字」は、各ページに書かれている内容です。条件や前提は、各事例の章で説明します。

組織種類使った仕事おもな数字
横須賀市自治体(約3,800人が対象)文章の作成・要約・校正最終アンケートで8割以上が「効率向上につながる」と回答
神戸市自治体(職員133名が試行)文章生成・翻訳・要約英語の文案作成が1件1時間から10分に(一例)
MIXI民間企業(全社導入)広告企画・投資の初期検討VCファンドの初期検討が1〜2時間から5〜10分に
ENEOSマテリアル製造業調査・設計・研修の分析研修アンケートの分析が1〜2時間から20秒に
大成建設建設業全社の知識業務1人あたり平均で週5.5時間以上の削減
ZenkenWEBマーケティング・海外人材営業の準備・翻訳知識労働で平均30〜50%の時間短縮
LINEヤフー情報通信業社内情報の検索・人事総務年間70〜80万時間の削減を目指す(目標)
三菱UFJ信託銀行金融機関社内の問い合わせ対応担当部署の対応時間を50%削減
三菱UFJ銀行金融機関提案書の共有・検索年間20万時間の削減をめざす(目標)
みずほフィナンシャルグループ金融機関スライドの作成作成時間を約50%削減
岡田研磨製造業(従業員80人)業務アプリの作成会社全体の労働時間が月330時間削減

仕事の種類は、文章づくり、調べもの、問い合わせ対応、資料づくり、社内ツールづくりと幅広く分かれています。AIエージェント(AIが手順を考えて進める仕組み)の例は、別の記事で紹介しているため、この記事では日常の業務で生成AIを使って時間を減らした例に絞っています。

数字の種類を見分ける

事例に出てくる数字は、同じ「削減」でも意味が異なります。次の表のように、書かれ方で区別しておくと、事例を比べやすくなります。

書かれ方意味この記事での例
実績実際の運用や試行で測った結果三菱UFJ信託銀行の対応時間50%削減、みずほFGのスライド作成時間約50%削減
見込み試行の結果などから、広げた場合を計算した数字三菱UFJ信託銀行の年間最大6万5,000時間、LINEヤフー人事総務の月間約1,600時間以上
目標これから達成を目指す数字LINEヤフーの年間70〜80万時間、三菱UFJ銀行の年間20万時間
自己申告企業や職員が、自分の実感や記録として語った数字MIXI・ENEOSマテリアル・Zenken・大成建設の事例ページの数字
一例特定の場面で得られた数字。全体の平均ではない神戸市の「1時間から10分」

この記事の数字について

OpenAIの顧客事例ページの数字は、企業が自社の取り組みとして語ったものを、OpenAIが公開しているものです。第三者が検証したものではありません。見込みや目標は、実績と分けて書いています。「年間〇万時間」と書かれていても、実際に減った時間とは限らない点に注意してください。

あわせて読みたいAIエージェントの例|国内外の導入事例と業務別の活用例、始め方を解説AIエージェントの例を、公式ページで確かめられた国内外の導入事例と、業務別の想定例に分けて紹介します。楽天・Money Forward・双葉電機・ソフトバンクなどの事例、数字の読み方、中小企業が取り入れる手順までを整理しました。

全社で使い始めた事例

庁舎のオフィスで、職員が同僚のPC画面を見ながら使い方を相談している

最初に紹介するのは、特定の部署だけでなく、職員や社員の広い範囲に生成AIを使えるようにした事例です。どの仕事に使うかは現場が見つけていくため、「使い方を広げる工夫」と「課題の出方」に特徴があります。

横須賀市:全職員に配って効果と課題を測る

神奈川県横須賀市は、2023年4月20日から、ChatGPTを全庁で使う活用実証を始めました。職員が日ごろ使っているチャットツール(LoGoチャット)の中にChatGPTのボットを置き、対象は全職員約3,800人です。市の報告資料によると、5月31日時点で41日間の利用があり、利用者率は50%、ボットへの問いかけは計25,897件でした。

2023年6月5日の結果報告では、最終アンケート(433人が回答、回収率約11%)で、8割以上の職員が「仕事の効率向上につながる」と回答しました。継続して使いたいと答えた職員は8割近くでした。利用者へのヒアリングでも、業務の短縮効果が認められたと報告されています。

一方で、課題もはっきり書かれています。主なものは次のとおりです。

  • 検索の用途で使う職員が約3割いた(ChatGPTは検索に向いていない)
  • 約6%の職員が「概ね不適切な回答が返ってくる」と回答した
  • 報告資料では、回答の精度に不満を持つ職員が5割近く、適切でない答えがあると認識した職員が4割強いた

市は、この結果を「質問の仕方や使い方の課題」と受け止めています。対応として、利用のコツを伝える「チャットGPT通信」の配信、AI戦略アドバイザーの配置、職員向けのスキル強化、市役所内のプロンプトコンテスト(指示文の事例を集める取り組み)、GPT-4の導入準備を進める方針を示しました。

アンケートの回収率は低い

横須賀市の最終アンケートは、対象約3,800人のうち433人の回答(約11%)です。使っている職員ほど答えやすいため、「8割」という数字は、回答した人の中での割合として読む必要があります。市の資料でも、回収率は明記されています。

神戸市:133名で3か月試して、使い方を集める

神戸市は、2023年6月23日から9月22日(営業日ベースで61日)まで、職員133名が参加する試行利用を行い、その結果を2023年12月の検証報告書にまとめています。環境は、Microsoftの「Azure OpenAI Service」と、職員が使うチャットツール(Microsoft Teams)をつなぐ形で、接続するツールは職員が内製しました。

試行期間中の利用は8,647回で、1人あたり1日平均1.07回です。8月17日からはGPT-4も併用されました。最終アンケートには71名(53%)が回答し、ほぼ全員が「仕事の効率が向上する」と回答しています。「向上しない」と答えた人は、中間・最終のどちらの調査でもいませんでした。

機能別の評価では、「知りたい情報の検索」を除くすべての項目で「良い」が「悪い」を上回りました。「とても良い」が最も多かったのは、Excelの関数やプログラムコードの生成です。検索は、GPT-4でも期待した回答が得られず、評価が下がっています。

報告書には、活用事例ごとの効果が載っています。たとえば、英語での文案作成が1件あたり1時間から10分になった例や、市の公式X(旧Twitter)の投稿文を、プレスリリースから140字に要約して作る例があります。いずれも、報告書の注記では「試行利用での活用事例で得られた一例」とされています。

「数秒」という数字の読み方

報告書には、ターゲット層の想定(ペルソナとカスタマージャーニーマップの作成)が「300分/件から数秒/件」になったという記載もあります。これはAIが文章を出すまでの時間を指していると読めます。人が内容を確認し、直す時間が含まれているかは、書かれていません。自社で見積もるときは、確認の時間も入れて考える必要があります。

神戸市の報告書で参考になるのは、試す前に目的を決めている点です。「安全に使える環境か」「ガイドラインに不足はないか」「使い方のアイデア」「課題」「コストと改善効果」の5つを検証の目的に置き、期間の終わりに1つずつ結果を整理しています。利用の注意事項(回答の事実確認など)は、既存のガイドラインで足りていたと総括されています。

MIXI:個人利用から全社導入へ、1.5か月で切り替える

MIXIは、ChatGPT Plusの利用補助を出して1,000人以上が個人で使っていた段階から、ChatGPT Enterpriseへ一括で移行しました。OpenAIの事例ページによると、全社への導入は約1.5か月で完了しています。切り替えの理由は、一人ずつ学習設定をする手間と、社内データの扱いのルールがはっきりしていなかったことでした。

導入後は、全社員向けのトレーニング(ChatGPT 101)や新卒向けのワークショップなどが行われました。事例ページには、次の数字が載っています。

  • 導入後3か月未満で、週に1回以上使う社員が80%を超え、GPTが1,600個以上作られた
  • 家族向けアプリ「みてね」の広告クリエイティブ企画で、月間約28時間の工数削減
  • 投資部門のVCファンドの初期検討が、1件あたり1〜2時間から5〜10分に
  • 投資部門では、業務量を70%以上削減した事例が複数ある
  • 取締役の発言として、プロジェクトによっては90%以上の業務時間を削減

投資部門の例は、ファンド側から届く提案資料を構造的に整理する専用のGPTを作った、というものです。事例ページでは「初期検討」の時間削減とされており、最終的な投資の判断までをAIに任せているわけではありません。

ENEOSマテリアル:調査・設計・研修の分析に使う

ENEOSマテリアルは、部署をまたぐ有志の横断組織が中心になって、ChatGPT Enterpriseを導入し、のちに全社員へ広げました。OpenAIの事例ページでは、導入後に「80%以上の従業員が業務改善の効果を報告した」と紹介されています。社内で作られたカスタムGPT(用途を決めた専用のGPT)は1,000を超えています。

仕事ごとの変化は、次のように書かれています。

仕事使い方変化(事例ページの記載)
技術調査(プロセス開発)deep research(時間をかけて調べて報告書にまとめる機能)で、海外の資料も調べるプロジェクトによって数か月かかっていた調査が、数十分で終わる
設計のたたき台(エンジニアリング)社内の設計ガイドラインを組み込んだカスタムGPTで、仕様案を出す数十分かかっていた業務が数秒に
研修アンケートの分析(人事)分析用のカスタムGPTを作る手作業で1〜2時間かかる作業が20秒で完了
研修の集計作業(人事)担当者がChatGPTに聞きながら集計ツールを自作作業時間を約90%削減

この事例で注目したいのは、設計の例です。カスタムGPTが材質の選定で「潜在的なリスクに気づかせてくれる」と語られており、時間の短縮だけでなく、確認の漏れを減らす使い方も紹介されています。生産技術本部の担当者は、製造業では人の関わりをなくして完全に自動化することはできないとして、社員の業務効率を上げる方向で使うと説明しています。

大成建設:人事部が主導し、人財育成として進める

大成建設は、ChatGPT Enterpriseの導入を人事部が主導しました。ねらいは、効率化だけでなく「AIを使いこなす人財を育てる」ことに置かれています。OpenAIの事例ページには、導入後の数字として次の内容が載っています。

項目数字
週間アクティブユーザー率90%
1人あたりの業務削減時間平均で週5.5時間以上(年間約260時間相当)
作成されたカスタムGPT3,300種類
作成されたプロジェクト3,800種類
継続希望率99%

この事例では、安心して使えるかどうかを便利さより先に考えた点が書かれています。アクセス制御、利用ログの整備、教育体制の構築、定期的なモニタリングを積み上げ、部門単位で参照できる範囲を決める運用と、継続的な教育を組み合わせたとのことです。現場と経営層の間に立つ人が両者をつなぐ「ミドルアウト型」の進め方も紹介されています。

Zenken:営業の準備時間を減らし、提案の数を増やす

WEBマーケティング事業と海外人材事業を持つZenkenは、2026年1月13日公開のOpenAIの事例ページで、ChatGPT Enterpriseの全社利用を紹介しています。導入前は、見込み客の調査、提案資料、営業メールの準備に時間がかかり、顧客と話す時間が限られていた、と書かれています。

事例ページに載っている主な数字は次のとおりです。

  • 週間アクティブユーザー率が90%超
  • 知識労働全般で、平均30〜50%の時間短縮
  • 社員1人あたり、月間5〜15時間の余剰時間を創出
  • 外部委託していた業務の内製化などで、前年比で年間約5,000万円の外部委託費用を削減
  • 提案の通過率が15〜20%向上、新規商談の成約率が5〜10%アップ、提案書の承認率が30%向上

導入を決めた理由として、入力したデータがAIの学習に使われないことの保証や、12の要件を満たしていることが挙げられています。翻訳の外注費を減らしながらスピードが上がったことも、海外人材事業の例として書かれています。時間の削減だけでなく、営業の成果にまで数字が及んでいる事例です。

立ち上げ方の違い

全社で使い始めた事例を、立ち上げ方で並べると、「最初の範囲」と「使い方を広める工夫」に違いがあります。公式ページに書かれている内容をまとめました。

組織最初の範囲と期間使い方を広める工夫
横須賀市全職員約3,800人が使えるチャットのボット。実証は約1か月中間・最終の2回のアンケート、利用のコツを伝える通信の配信
神戸市参加を希望した職員133名。約3か月中間・最終のアンケート、意見交換会(職員87名が参加)、活用事例の集約
MIXI個人利用から、全社へ約1.5か月で一括移行全社員向けトレーニング、新卒向けワークショップ、開発者向けハッカソン
ENEOSマテリアル有志の横断組織が導入し、のちに全社員へ研究開発・人事・経営企画などのアーリーアダプターがユースケースを作る
大成建設人事部が主導して全社へ研修、イベント、コミュニティ、ハッカソン。現場と経営層をつなぐ役割を置く

どの組織も、配って終わりにはしていません。使い方の情報を集めて共有する場(アンケート、意見交換会、トレーニング、コミュニティ)を、導入と同時に用意しています。自社で使い始めるときも、最初に「使い方を持ち寄る場」を決めておくと、使う人が増えにくい状況を避けられます。

業務に合わせて作った事例

現場の担当者と開発担当者が、画面を見ながら使い方を打ち合わせしている

次に、汎用のチャットツールを配るだけでなく、自社の資料や業務に合わせてツールを作った事例を紹介します。社内文書の検索、問い合わせ対応、提案書の共有、スライドの作成といった、特定の仕事に絞っている点が特徴です。

LINEヤフー:社内文書を検索するツールと人事総務のツール

LINEヤフーは、2024年7月11日のプレスリリースで、生成AIを使った社内向けツール「SeekAI」を全従業員に本格導入したと発表しました。社内のデータベースから質問に合った情報を探し、回答を表示する仕組み(RAG)で、一般的な回答ではなく、社内データをもとにした回答を返します。部門やプロジェクトごとに、参照するデータを登録できます。

プレスリリースの数字には、実績と目標が混ざっています。

数字内容種類
年間70〜80万時間生成AIを使った業務効率化ツールによる削減を「目指す」目標
正答率約98%テスト導入段階の、広告事業のカスタマーサポート業務での数字実績(テスト段階)
工数・時間の削減エンジニアが技術スタックを検索・選定する工数の削減(具体的な数値は記載なし)実績(定性的)

2026年2月10日のプレスリリースでは、人事総務の分野で、2026年春までに新たに10件のAI活用ツールを運用開始するとしています。紹介されているのは、面接日程調整の自動化、採用に関するアンケートの自由記述の整理、従業員のキャリア形成を支援するAI、社内公募の職務経歴文づくりの支援などです。人事総務の組織全体で月間約1,600時間以上の工数削減を見込むとされており、これは見込みの数字です。

同じリリースには、「生成AIの出力は参考情報の一つとして扱い、最終的な判断と対応は必ず人が行う」と明記されています。採用や社内公募のような、人に関わる判断では、AIの役割を補助に限る考え方が書かれています。

三菱UFJ信託銀行:マニュアルを読ませて問い合わせに答える

三菱UFJ信託銀行とカサナレ株式会社は、2024年8月2日に共同でプレスリリースを出しています。金融市場取引の業務で、システムの仕様書や業務マニュアル、FAQを生成AIに読み込ませ、専門部署への社内の問い合わせ対応を一部自動化したというものです。

プレスリリースの内容は次のとおりです。

  • PoC(試験的な検証)で、正答率90%以上を達成した
  • 2024年4月から、業務での利用を始めた
  • 担当部署の対応時間を50%削減した
  • 他の領域に広げられれば、年間数十万時間以上の効率化が見込める(見込み)

その後、同じ取り組みはリテール業務にも広がりました。2025年10月2日に公開された三菱UFJイノベーション・パートナーズの記事によると、本部と全国の支店にいる約2,000人に関わるプロジェクトで、問い合わせ対応の部署と1つの支店での3か月の実証実験を経て、全社での導入が決まっています。年間最大6万5,000時間の効率化が見込まれるとされ、これは試行店の実績をもとにした見込みの数字です。

記事では、ユーザーへのアンケートで全員が「役に立つ」「使い続けたい」と答えたことも紹介されています。同時に、「絶対的に正しい回答を求める人が一定数いるが、必ずしもそうではないと分かった上で使いこなす必要がある」という、現場の担当者の課題意識も書かれています。正しい質問をすれば答えが返る、という体験を積んでもらうことに苦労した、とのことです。

三菱UFJ銀行:提案書をほかの営業チームと安全に共有する

三菱UFJ銀行は、AIスタートアップのLayerXと連携し、法人営業の提案書を行内で共有する「提案書データレイク」を運用しています。2025年12月15日付の三菱UFJフィナンシャル・グループの記事によると、課題は、顧客ごとに内容が異なる提案書のノウハウが、個人や部署の中に閉じてしまうことでした。

記事に書かれている仕組みは、次の2つが中心です。

  • 提案書を共有するとき、顧客情報を自動でマスキング(伏せ字に)する
  • 銀行特有の用語を理解したうえで、資料に自動でタグ付けして探しやすくする

その後、検索したい情報が分厚い提案資料のどこにあるかを、スライド単位で探して示すAIエージェントの機能も追加されました。全行に広げることで、行全体で年間20万時間の業務量の削減を「めざす」とされており、これは目標です。

この記事で印象的なのは、担当者の「AIエージェントを導入することが目的ではなく、現場の課題解決が出発点」という発言です。営業担当者に何度もインタビューし、デモの感想を開発側に戻す進め方をとった、とも書かれています。

みずほフィナンシャルグループ:スライド作成を内製のツールで支える

みずほフィナンシャルグループは、社内向けのスライド自動生成AI「みずほスライドジェネレーター」を内製で作りました。MIZUHO DXの記事によると、Amazon Bedrock上のClaudeを使い、チャットで指示を入力するとスライドの構成を考えて、PowerPointで編集できるスライドを作ります。会議の議事録を取り込んで、共有用のスライドを作ることもできます。

記事に書かれている主な数字は次のとおりです。

  • 着想から10日でプロトタイプを作った
  • スライドの作成時間を約50%削減した
  • 本部所属の実績値で、1人あたり月平均約10時間の工数削減
  • ユーザー満足度は約80%
  • グループ全体で1万人以上が使い、作られたスライドは数万枚

開発では、レイアウトが崩れる問題と、情報の正確さの問題があったと書かれています。一般的なスライド生成AIはキーワードを並べる形になりがちですが、銀行の実務では解釈のずれが許されないため、「スライド単体で正確に意図が伝わる」ことを品質の基準にしたそうです。何が「良いスライド」かの答えは今も探していると、担当者が述べています。なお、取得したページには公開日の記載が見当たりませんでした。

作り込んだ事例の共通点

4つの事例で、AIに読ませたものと、品質を保つ工夫を並べると、次のようになります。

組織AIに読ませたもの品質を保つ工夫
LINEヤフー部門やプロジェクトごとに登録した社内データ出力は参考情報とし、最終判断は人が行う。AIガバナンス部門が利用範囲を判断
三菱UFJ信託銀行システムの仕様書、業務マニュアル、FAQ導入後も、ユーザーのフィードバックをもとに改善し続ける仕組み
三菱UFJ銀行法人営業の提案書(顧客情報をマスキングしたもの)営業担当者のデモの感想や改善点を、開発側へ繰り返し戻す
みずほFG利用者の指示と、会議の議事録「スライド単体で正確に意図が伝わる」ことを品質の基準にする

共通しているのは、AIに読ませる資料と、確かめる方法を先に決めていることです。汎用のAIに何でも聞くのではなく、社内の資料に基づいて答えさせ、現場の声を聞きながら直しています。自社で作るときも、まず「どの資料を読ませるか」を決めると、必要な整備が見えてきます。

中小企業の事例

町工場で、従業員がタブレットに検査結果を入力している

ここまでは大きな組織が中心でした。ここでは、従業員数十名規模の製造業の事例と、中小企業全体のAI活用の状況を、公的機関の資料から紹介します。

岡田研磨:AIとの対話で業務アプリを作る

石川県津幡町の岡田研磨株式会社は、建設機械やシリンダーなどの部品を加工・組み立てする、従業員80人の会社です。中小機構のJ-Net21が2025年7月31日に公開した記事によると、専務の岡田氏が、AIと日本語で対話しながら業務アプリを自分たちで作る方法を進めています。社内では約20種類のアプリが動いています。

主なアプリには、次のようなものがあります。

  • 検査成績書をタブレットに直接入力するシステム
  • すべての工作機械の稼働状況を把握するシステム
  • 図面のデジタル化とチャットアプリ

記事に書かれている数字は、ペーパーレス化によるA4用紙換算で月5,600枚の紙の削減と、会社全体の労働時間が月330時間削減されたことです。記事には、この時間の算出方法や比較の期間は書かれていません。AIだけの効果ではなく、タブレットの配布やペーパーレス化を含めた取り組み全体の成果と読むのが適切です。

記事で参考になるのは、うまくいかなかった経緯です。最初にタブレットを5台試験導入したところ、ベテランの従業員から「紙の方が見やすい」という声が出て、端末が使われずに放置されることがありました。そこで、毎日必ず行う仕事(検査成績書)からシステム化する方針に切り替え、従業員が自然に端末に慣れるようにしたとのことです。管理側の都合ではなく、現場を楽にすることを重視したのが浸透の要因だと、岡田氏は述べています。

AIとの対話は通算で約1,000時間におよび、記事では「2,000万〜3,000万円級のシステム」を約300時間で構築したと紹介されています。この金額や時間の算出の根拠は、記事には書かれていません。

中小機構の調査から分かること

中小企業基盤整備機構(中小機構)は、2026年3月に「中小企業のAI等の利活用に係る実態調査」を公表しています。調査期間は2025年11月17日から12月12日で、全国の中小企業10,000社を対象としたWebアンケートです。資料の要約版から、事例を読むうえで役に立つ数字を拾いました。

項目数字
AIの導入率(全社的に、または一部の業務で導入)20.4%(導入を検討している企業は18.6%)
導入済みのAIサービス生成AIが82.6%で最多(次いで音声認識・音声対話AIが29.8%)
AIの導入目的「業務効率化/作業時間の短縮」が87.0%で最多
AIの導入効果「業務効率化/作業時間の短縮」が83.2%、「人手不足対応」が33.9%、「品質向上」が30.6%
「付加価値創出」の効果AIが22.3%で、従来のIT(7.4%)を上回る
情報の不足「成功事例や活用事例などの情報」が十分に入手できていないと答えた割合が83.3%

導入した企業では、目的も効果も「業務効率化・作業時間の短縮」が突出しています。一方で、中小企業の8割以上が「成功事例や活用事例の情報が足りない」と答えており、公的支援として求める内容でも、導入費用の助成(77.9%)に次いで、導入事例の情報提供(70.5%)が挙がっています。

規模が小さくても、事例は参考になる

岡田研磨のように、従業員が数十名でも、現場の仕事に合わせて小さく作り、毎日使う業務から広げている例があります。大きな組織の事例は、人数や予算が違います。数字そのものより、どの仕事から始めたか、どう定着させたかを参考にすると、自社に取り入れやすくなります。

自社に近い事例の探し方

事例の情報が足りないと感じたときは、公的機関のサイトで探す方法があります。中小機構のJ-Net21には、中小企業の取り組みを紹介する「取組事例」のページがあり、岡田研磨の記事もここに載っています。経済産業省の「DXセレクション」は、中堅・中小企業のDXの優良事例を選定する取り組みで、選定企業のレポートが公開されています。

探すときは、会社の規模や業種が近いものを選び、「何の仕事に使ったか」「何が障害だったか」の2点に注目します。成果の数字が載っていない事例でも、つまずいた点や定着の工夫は、自社で試すときの参考になります。

あわせて読みたいAIエージェント導入は中小企業でもできる?少人数・低予算で始める手順と注意点AIエージェントは、中小企業でも少人数・低予算で導入できます。専任者がいない会社が先に決めること、サービスの選び方、小さく始める進め方、費用と補助金の見方、少人数でも守りたいルール、うまくいかない原因までを、担当者・経営者向けに整理しました。

事例から分かること

壁に付箋を貼り、事例の共通点をまとめているチーム

ここまでの事例を並べて見ると、効果が出ている仕事や、つまずいた点に共通するものがあります。公式ページに書かれている内容をもとに整理します。

効果が出ている仕事の特徴

数字が出ている仕事は、次のような型に分けられます。

仕事の型事例共通する特徴
文章の下書き・要約横須賀市、神戸市、MIXI毎日発生し、「たたき台」があれば人が仕上げられる
社内の資料から探して答えるLINEヤフー、三菱UFJ信託銀行マニュアルやFAQなど、読ませる資料がそろっている
集計・分析・調査ENEOSマテリアル、MIXI手順が決まっていて、結果を人が確かめられる
資料づくりみずほFG、Zenken体裁の調整や準備に時間がとられている
翻訳神戸市、Zenken外注していた作業を、社内で下書きまで進められる
簡単な業務ツールの作成岡田研磨、ENEOSマテリアル現場の担当者が、プログラミングの経験なしに作れる

どの型も、人が最後に確認できる仕事です。事例の多くで、AIが作ったものを人が確かめて使う流れになっています。LINEヤフーの人事総務のように、最終判断は人が行うと明記している例もあります。

つまずきやすい点

公式ページには、うまくいかなかった点や課題も書かれています。次の4つは、複数の事例に出てきます。

  • 検索に使ってしまう:横須賀市では約3割、神戸市でも検索の評価が低くなりました。最新の情報や固有の事実を調べるには、通常の検索の方が向いています
  • 回答の精度への不満:横須賀市では5割近くの職員が不満を持ち、市は質問の仕方の課題と捉えています。三菱UFJ信託銀行も、使いこなす前提の理解づくりに苦労しています
  • 現場で使われない:岡田研磨では、試験導入のタブレットが放置されました。毎日必ず行う仕事から始めて定着させています
  • 安心して使えるかどうか:MIXIは学習設定とルールの未整備、大成建設は情報統制と誤生成のリスクを、導入前の課題として挙げています

対応として、横須賀市は利用のコツを伝える通信とコンテスト、神戸市はプロンプトの事例集と相談先の整備、MIXIはトレーニング、大成建設は利用ログとモニタリングを行っています。ツールを配るだけで終わらせず、使い方を伝える仕組みを同時に作っているのが共通点です。

数字を読むときの注意

事例の数字を、そのまま自社に当てはめるのは危険です。次の点を確かめてから読むと、判断を誤りにくくなります。

確かめること理由この記事の例
実績か、見込みか、目標か見込みや目標は、実際に減った時間ではない三菱UFJ銀行の年間20万時間は目標
どの範囲の数字か特定の部署・作業の数字を、全社の数字と混同しない神戸市の1時間から10分は一例
確認の時間が入っているかAIが出すまでの時間だけでは、実際の削減にならない神戸市の「数秒」
AIだけの効果かペーパーレス化など、ほかの取り組みを含む場合がある岡田研磨の月330時間
アンケートの回収率回答した人は、使っている人に偏りやすい横須賀市の回収率約11%
誰が公表した数字か企業の自己申告は、第三者が検証したものではないOpenAIの顧客事例の数字

これらを確かめたうえで、「自社の仕事なら、確認の時間を入れてどれくらい減りそうか」を自分の言葉で見積もり直すと、事例を判断の材料として使えます。数字の大きさだけで、導入の可否を決めるのはおすすめしません。

空いた時間が、実際に別の仕事に使われたのかも、数字からは分かりません。MIXIの投資部門のように、「人と人とのコミュニケーションに時間を割けている」と語る例はありますが、時間の使い道は各社の運用次第です。

規模に応じた参考の仕方

事例の組織は規模が大きく違うため、参考にする部分も変わります。

  • 自治体の事例:試す範囲、期間、アンケートの取り方、ガイドラインの作り方が参考になります。目的を決めて検証し、結果を整理して公表している点は、小さな会社でも真似しやすい進め方です
  • 大きな民間企業の事例:全社に広げるときの教育、利用ログ、アクセス制御などの設計が参考になります。人数が違うため、数字は参考程度に見てください
  • 中小企業の事例:どの仕事から始めたか、現場にどう定着させたかが、そのまま参考になります。担当者が現場に近く、すぐに作り直せる点も強みです

業務別の活用例(想定例)

複数の部署の担当者が、それぞれのPCで作業している様子

ここからは、公式の事例を参考にした想定例です。実際の企業の成果ではなく、自社で考えるときの材料として読んでください。作業の型ごとに、似た事例を添えています。

作業の型想定例参考にした事例
文章の下書き取引先へのお知らせ文や、問い合わせへの返信の下書きを作り、担当者が直して送る横須賀市、神戸市
要約長い資料や議事録から、要点と決まったことを数行にまとめる神戸市(プレスリリースの要約)
社内の問い合わせ就業規則や手順書を読み込ませ、「この場合はどうするか」に答える。根拠の箇所も示すLINEヤフー、三菱UFJ信託銀行
集計・分析アンケートの自由記述を分類し、傾向をまとめるENEOSマテリアル、LINEヤフー(人事総務)
営業の準備訪問先の業界や課題を調べ、提案書のたたき台を作るZenken、MIXI
現場の記録紙の点検表を、タブレットで入力する簡単なアプリにする岡田研磨

想定例:社内の問い合わせに答える

従業員30名ほどの会社で、総務担当者が「有給休暇の申請方法」「経費精算の締め日」などの質問に、毎日何件も答えている場合を考えます。就業規則、経費精算の手順書、よくある質問を整理し、AIに読み込ませて、従業員が直接質問できるようにします。

答えの下には、根拠となった資料の名前と箇所を表示させます。回答が曖昧なときは「総務に確認してください」と返すように指示しておくと、誤った案内を減らせます。三菱UFJ信託銀行の例でも、読ませる資料を整備することが前提でした。

想定例:営業の提案書のたたき台を作る

営業担当者が、訪問前に相手の会社のWebサイトを読み、課題の仮説を立て、過去の提案書を探して、新しい提案書を作るとします。この準備のうち、会社情報の整理、仮説の候補出し、過去の提案書からの構成の抜き出しを、AIに任せます。

提案の中身の判断と、顧客に出す前の確認は人が行います。Zenkenの例では、準備にかかる時間が短くなり、顧客と話す時間に回せたと書かれています。過去の提案書を使うときは、三菱UFJ銀行の例のように、顧客名などの情報を伏せたうえで共有する決まりが必要です。

想定例:現場の点検記録を入力しやすくする

製造や設備管理の現場で、紙の点検表に記入し、あとで事務所でパソコンに打ち直している場合を考えます。AIに「点検項目を選ぶだけで記録でき、一覧に出せる画面を作りたい」と日本語で伝え、簡単な入力アプリを作ります。

岡田研磨の例のように、毎日必ず行う仕事から始めると、現場に定着しやすくなります。アプリのデータの保存場所や、誰が見られるかは、事前に決めておきます。

想定例:アンケートの自由記述を分類する

社内の研修後アンケートや、お客様アンケートの自由記述が、毎回100件ほど集まる場合を考えます。これまでは、担当者が一件ずつ読んで分類し、傾向をまとめていたとします。AIに記述を渡して、「内容のカテゴリ」「良い点・要望」に分けさせ、件数と代表的な意見の一覧を作らせます。

ENEOSマテリアルの人事部では、研修アンケートの分析にカスタムGPTを使い、手作業で1〜2時間かかる作業が20秒になったと紹介されています。分類の結果は、元の記述と見比べて、数件を抜き取って確かめると安心です。

想定例は、そのまま数字に直さない

上の例に、時間の削減の数字は入れていません。仕事の量や手順は会社ごとに違うため、他社の数字を当てはめても意味がないからです。数字は、自社で小さく試して測ります。測り方は、次の章で説明します。

自社で試す手順

小さな事務所で、経営者と担当者が一緒にPCの画面を見て相談している

事例に共通するのは、いきなり全社に広げずに、範囲を決めて試し、結果を見て広げていることです。神戸市は133名で3か月、三菱UFJ信託銀行は1つの支店で3か月の実証を行っています。自社で試すときの手順を整理します。

進め方

  1. 試す仕事を1つ選ぶ毎週または毎日発生し、人が最後に確認できる仕事を選びます。文章の下書き、要約、問い合わせの一次回答、集計などが候補です。
  2. 今の作業時間を測るAIを使う前に、1件あたり、または1回あたりにかかる時間を記録します。数日分の平均で十分です。
  3. 使う人と期間を決める2〜5人、1〜2か月から始めます。使う人には、検索には向いていないことなど、使い方のコツを最初に伝えます。
  4. 入れてよい情報を決める顧客の個人情報や社外秘を入れてよいか、使うプランの学習設定はどうなっているかを確認します。
  5. 結果を測って、広げるか決める確認や修正の時間も含めて、作業時間がどう変わったかを比べます。うまくいった依頼文は、共有します。

使うAIは、ChatGPT、Claude、Geminiなど、すでに契約しているものや、無料で試せるものから選んで構いません。事例の企業も、まず個人で使う段階や、少人数の試行から始めています。

効果の測り方(計算例は想定)

効果は、「AIが答えを出す時間」ではなく、「依頼から、使える状態になるまでの時間」で測ります。次の表は、月次の報告文書づくりを例にした、計算の考え方です。数字は説明のための想定です。

項目AIを使う前AIを使った場合
情報を集める40分40分(変わらない)
下書きを作る60分5分(AIが作る)
内容を確認して直す20分30分(確認に時間がかかる)
合計120分75分

この想定では、下書きの時間は大きく減りますが、確認の時間は増えています。合計では45分(約4割)の短縮です。「下書きが60分から5分になった」とだけ見ると、効果を大きく見積もってしまいます。

次の項目も、あわせて記録しておくと、広げるかどうかを判断しやすくなります。

  • 使った回数と、使った人数
  • 修正が必要だった割合(そのまま使えたか、直したか)
  • 誤りや不適切な回答があった件数と、その内容
  • 使った人の感想(使いやすさ、困った点)

1か月の試し方(目安)

試す期間は、1か月ほどを目安にすると、結果を見て判断しやすくなります。週ごとにやることを分けた例です。

期間やること確認すること
1週目仕事を1つ選び、今の作業時間を記録する。入力してよい情報を決める1回あたりの作業時間、使うデータの範囲
2週目2〜5人で使い始める。うまくいった依頼文を共有する使った回数、困った点
3週目修正が多かった作業の依頼文を見直す。確認の手順を決める修正した割合、誤りの内容
4週目作業時間を、確認や修正の時間も含めて比べる。広げるか決める前後の作業時間、使った人の感想

1か月で効果が見えなくても、失敗とは限りません。依頼文の書き方や、読ませる資料の整備で結果が変わることが多いため、原因を整理してから、もう一度同じ仕事で試してみてください。横須賀市は、利用のコツを伝える通信による啓発で、中間アンケートから改善が見られたと報告しています。

社内で決めておくこと

事例では、利用ルールを先に整えている会社が目立ちます。次の点は、試す前に決めておくと安心です。

  • 入力してよい情報と、入力してはいけない情報(個人情報、取引先の機密など)
  • 使ってよいAIのサービスと、契約するプラン
  • AIの回答を、社外に出す前に誰が確認するか
  • 困ったときの相談先と、うまくいった依頼文の共有場所

社内ルールの作り方は、生成AIの社内ルールの記事で詳しく説明しています。

あわせて読みたい生成AIの社内ルールの作り方|決める項目と文例、運用のコツを公的資料から解説生成AIの社内ルールに入れる項目(目的・使えるサービス・入力してよい情報・出力の確認・相談窓口)と、作り方の手順、文例、運用のコツを、AI事業者ガイドラインや個人情報保護委員会の注意喚起など公的資料に沿って解説します。

個人の判断で業務データを入れない

会社として使うプランや設定が決まっていない段階で、顧客の情報や社外秘の資料を、従業員が個人のアカウントで入力するのは避けてください。MIXIの事例でも、個人利用の段階では、学習の設定と社内のルールの整備が壁になっていました。

よくある質問

中小企業でも、効果は出ますか?

岡田研磨のように、従業員80人の会社でも、業務アプリの作成で成果が出ている例があります。中小機構の調査でも、AIを導入した企業の8割以上が「業務効率化・作業時間の短縮」を効果として挙げています。ただし、効果の大きさは仕事や使い方で変わります。小さく試して、自社の数字で確かめるのが確実です。

どんな仕事から始めるのがよいですか?

毎日または毎週発生し、手順が大まかに決まっていて、人が最後に確認できる仕事が向いています。文章の下書き、要約、問い合わせの一次回答、アンケートの集計などです。間違えたときの影響が大きい仕事や、1円単位の正確さが必要な計算は、後回しにしましょう。

事例の「削減時間」は、そのまま期待してよいですか?

そのままは期待しない方が安全です。見込みや目標の数字が多く、確認の時間が含まれていない場合もあります。この記事の「数字を読むときの注意」の表で、実績か見込みか、範囲はどこまでかを確かめてください。

検索の代わりに使ってもよいですか?

最新の情報や固有の事実を調べる用途には、あまり向いていません。横須賀市と神戸市の報告でも、検索の用途は評価が低くなっています。文章の作成、要約、整理、アイデア出しなど、材料を渡して形にしてもらう使い方の方が、評価が高くなっています。

回答が間違っていたらどうしますか?

AIの回答は、人が確認する前提で使います。横須賀市では約6%の職員が「概ね不適切な回答が返ってくる」と答えています。社外に出す文書や、お客様への案内は、必ず担当者が中身を確かめてから出す決まりにしておきましょう。

入力した内容は、AIの学習に使われますか?

サービスやプランによって扱いが異なります。MIXIは学習の設定とデータの扱いのルールが個人利用の壁になっていたと述べ、Zenkenは入力データが学習に使われないことの保証を導入の決め手の一つに挙げています。使う前に、各社の公式ページで、プランごとの扱いと設定方法を確認してください。

全員に使わせた方がよいですか?

事例では、全社に広げた会社と、特定の業務に絞った会社の両方があります。いきなり全員に配るより、少人数で試して使い方を固めてから広げる方が、つまずきを減らせます。広げるときは、使い方を伝える研修や事例集を同時に用意している例が多くあります。

費用はどれくらいかかりますか?

サービスとプランによって異なります。この記事の事例のうち、企業の個別の費用は公式ページで確かめられませんでした。神戸市の報告書は、低コストのサービスを使うことで、大きな費用負担なく効果を得られたと総括しています。契約する前に、各サービスの公式の料金ページで最新の内容を確認してください。

社内の資料をAIに読ませたいときは、どうすればよいですか?

三菱UFJ信託銀行や三菱UFJ銀行の事例では、読ませる資料(マニュアル、FAQ、提案書)を先に整えています。三菱UFJ銀行は、提案書の顧客情報を伏せる処理も入れています。まず、読ませてよい資料と、読ませてはいけない資料を分け、機密や個人情報が含まれる資料は、扱いを決めてから進めてください。

試す期間は、どれくらいが目安ですか?

事例では、横須賀市が約1か月、神戸市が約3か月、三菱UFJ信託銀行(リテール業務)が3か月の実証をしています。小さな会社であれば、1か月ほどで、結果を見て広げるかを判断できます。期間が短すぎると、使い方に慣れる前に終わってしまうため、最低でも2〜3週間は見てください。

補助金は使えますか?

中小企業向けには、IT・AIの導入を支援する補助金があります。対象や条件は年度によって変わるため、中小企業庁や事務局の公式ページで最新の情報を確認してください。

まとめ

この記事のまとめ

  • 自治体・民間企業・中小企業のいずれでも、文章の下書き、要約、問い合わせ対応、集計、資料づくりなどで、業務の効率化に取り組んでいる
  • 数字には、実績・見込み・目標・自己申告がある。「年間〇万時間」は、実際に減った時間とは限らない
  • つまずきは、検索への利用、回答の精度への不満、現場で使われないこと、安心して使えるかどうかの4つに集まっている
  • 効果が出ているのは、毎日発生し、人が最後に確認できる仕事。範囲を決めて試し、結果を見て広げている
  • 自社で試すときは、1つの仕事を選び、確認や修正の時間も含めて作業時間を測る
  • 入力してよい情報、使うプラン、確認する人を、試す前に決めておく

AIの業務効率化は、事例を読むだけでは自社の効果が分からず、小さく試して測ることが近道です。ただ、どの仕事から始めるか、どのツールを選ぶか、社内にどう広げるかは、会社ごとに答えが変わります。

INTERCREATE JAPANでは、Claude Code・Codexなどを使った業務ツールの作成や、社内で使い続けられる仕組みづくりをお手伝いしています。どの仕事から始めるか迷っている段階でも、お気軽にご相談ください。

この記事を書いた人

INTERCREATE JAPAN 編集部

Web制作、業務システムの開発、Claude Code・Codex の導入支援を行う INTERCREATE JAPAN の編集部です。実際の制作や導入の現場で確かめた手順をもとに、AIツールの使い方やホームページの運用について解説しています。

参考・出典